自分の中の核を鍛える
改めて考えてみると、恋人との別れを決断した直後の女性達が際立って美しいのは、他のいかなるときよりも、自分を強く信じているからにほかならない。自分以外の、誰の保証も得られない中で、かけがえのない存在を、あるいはそうなり得る可能性のあったものを、手放す。リスクを覚悟した上での決断が、嫌が応にも自分を信じざるを得ない状況を作り出し、そんな強さが、彼女達をいつも以上に美しく見せていたのだ。
「自分を信じるよりほかない」という状況は、決して楽なものじゃない。孤独だし、怖いし、苦しい。けれどきっとそんな、言うならば余計な負荷が、さながらウェイトトレーニングで筋肉を鍛えるときのように、自分の核をより強く、鍛えてくれる。そうやって鍛えられた核の強度こそ、自信の大きさであると私は思うのだ。
50キロのバーベルを持ち上げられるといくら頭で思ったところで、それに足る筋肉がなければバーベルはびくともしない。ぬるい自己暗示じゃどうにもならない。ちょっとずつ負荷をかけて、無意識下できちんと働いてくれるまでに、鍛えなきゃいけない。そのために、孤独な中で決断することが必要なのだ。
もちろん、必ずしも大切な人との別離でなくたっていい。仕事で責任のある決断を下すのだっていい。自分を信じるより他ない、誰にも甘えられない状況で勝負に挑むことが重要なのだ。そのときは不安でいっぱいでも、結果勝負に負けたとしても、一度大きな決断を下したという事実は、それだけで自分の核を強くしてくれる。そしてその強度は必ず、美しさとなって外見に表れる。
今の世の中、表面的な美しさなんてお金を出せば結構簡単に手に入るけれど、揺るぎない核を持った女性の、内面からにじみ出る凜とした美しさは、どんなにお金をかけたって手に入れることができない。だからこそ、しかるべきときには正面から堂々と勝負する、決断を下す。それができる女性でありたいと、私は思うのだ。
Text/紫原明子
※2015年11月4日に「SOLO」で掲載しました