その時代の可愛さを敏感にキャッチし
絶妙な外見を作り上げる

今年こんなに履いてるガウチョパンツも数年と経たないうちに、何であんな恥ずかしいズボン履いてたんだろうって、私達の黒歴史になるんだろう。
今ナチュラルな太い並行眉のあなただって、かつては一世を風靡していた安室ちゃんを真似して、針金のような極細眉毛だったんではなかろうか。

イケてるもの、可愛いものは時代とともにあっという間に移り変わる。一度会得すればはいおしまい、というわけにいかないのがオシャレや美容の難しいところであって。
そのときどきでよしとされる可愛さを敏感にキャッチし、自分自身を超ストイックに客観視した上で、痛々しくない絶妙な外見をシーズンごとに形作っていく。女性の美が作られる過程を改めて振り返ってみれば嫌が応にも浮き彫りとなる真理、すなわち美人とは、超敏腕マーケターなのだ。

どのルートを乗るのか自分で選ぶところから

ところが、美人ってそもそもその希少価値によって重宝されているわけで、誰もが皆、敏腕マーケターにはなれない。
何より、必ずしもすべての女性がいつまでもトレンドを追い続ける必要もなく、たとえば草間彌生とか、アパホテルの社長とか、彼女たちのようにオリジナル路線に走ったっていいのだ(ちょっと極端だけど)。

いずれにせよ大切なのは、ある程度の年齢を迎えた段階で、自分がこれからどのルートに乗っかって、どんな風に年を重ねていくのか、自分できちんと選ぶことなのだろう。
何しろそこに無自覚でいる限り、私のようにいつまでも鏡の前で、無意識のアヒル口を繰り出し悦に浸る、イタいおばちゃんになってしまう。

かつて、尊敬する美しいお姉さんが教えてくれた。
「いつかおばあちゃんになるために、女性はきちんとおばちゃんにならなきゃいけないの」と。

自分を客観視する、って口で言うのは簡単だけど実際非常に難しい。
だからこそ、抗えない時間をどんな風に受け止めていくのか、これから自分がどんなおばちゃんになるのか。
まずはそんなことから考えてみるといいのかも、と思っている。

Text/紫原明子

※2015年10月8日に「SOLO」で掲載しました