「選ばれない」ことで生じる絶望を抱えたとしても

この司令官のような男性に、私は見覚えがある。出生率の低下は女性の社会進出によるもので、かつてのような皆婚社会に戻り男性の賃金を上げれば(女性の社会進出をブロックすれば)、みんな上手くいく。そう主張する男性を、時折SNSで見かける。確かに、かつてのような社会に戻れば、結婚できないことで悩む男女は今よりもぐっと減るだろう。マッチングアプリでおかしな男に遭遇して不快な思いをするより、お節介な親戚のおばちゃんに間に入ってもらったほうが安心だし、プライドが保たれる人も多いはずだ。 でも『侍女の物語』で主人公・ジューンが遭遇する不幸を考えると、たとえ「選別される」ことで生じる絶望を抱えたとしても、やっぱりかつてのような社会に戻るわけにはいかないし、ギレアデ共和国のような未来にしてはいけないと感じる。32歳の時点で「選ばれていない」未婚の私でさえ、そう思うのだ。ギレアデ共和国には、自由がない。意志がない。それはディストピア以外の何者でもない。

今年もまた、私たちは仕事において、恋愛において、家庭において、社会において、様々な「選別」をされるだろう。それによって絶望したり、悩んだり、傷ついたりするだろう。だけどそこには、自由や、意志がある。今となっては当たり前すぎて見過ごしてしまいがちだけど、そのことをもう一度、思い出したい。

ちなみに『侍女の物語』、小説版はとっつきにくいな?と思う人もいるかもしれないので、そういう場合はHuluで配信されているドラマ版を見てみてください。海外ドラマあるあるで見出すと止まらなくなるけど、それでも必見!

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。