ひとり純喫茶

かつて日本を支えたサラリーマンのための純喫茶/東京・兜町「may」

古きよき純喫茶も、その時代の移り変わりとともに、閉店してしまうこともあります。とても好きだった、あの純喫茶。だからこそ、閉店を見届けられるならば、マスターやママに精一杯の感謝を。

 好きなものがなくなってしまうことは、とても寂しいことです。もちろん純喫茶もその例外ではなく、「閉店」を知る瞬間は幾度となくやりきれない気持ちに。
閉店の理由はいくつかあり、例えば、店主の高齢化、建物の老朽化、後継者の不在、お客さんの減少など…。

 どんなにその純喫茶を好きでいても、店主が下した「閉店」という決心はなかなか変えられるものではありません。
それならば、せめて営業している時に少しでも多く足を運び、「珈琲、美味しかったです」「ここのサンドイッチが食べたくて一日を頑張れました」「今日もお元気そうで何よりです」など、マスターやママと言葉を交わしたい。そして、お店を続けて下さっていることへの感謝とその店が好きだという気持ちを素直に伝えられたならと思いました。

 そんな思いを込めて、今回はぜひ皆さんに訪れて頂きたい純喫茶を紹介します。

東京の兜町にあった純喫茶「may」

 日本を代表する金融商品取引所として、日本経済の成長に貢献してきた東京証券取引所。近くには、かつてスーツ姿のサラリーマンたちがひとときの憩いを求めてひっきりなしにやってくる純喫茶がありました。場所は兜町。東証の向かいで今も営業を続けている「may」という店です。

東京の兜町にあった純喫茶「may」

 時代の流れとともに技術が発達し、作業がコンピュータ化された結果、今ではmayの扉を開ける人もめっきり少なくなってしまったそうです。かつては、決して広くない店内に4人の女性アルバイトが忙しく働き、毎日やってくる常連客の顔と好きな席を把握しては、切り盛りしていたのだとか。

 前の賑わいはなくなりましたが、昭和の時代に、働くサラリーマンたちを見守り続けてきた老舗は今も訪れる人たちをほっとさせる空間です。
歴史を感じるあたたかみのある店内と、カウンターの奥にいらっしゃる白い髭をたくわえた穏やかなマスターとやさしいママが出迎えてくれます。

東京の兜町にあった純喫茶「may」

 店の扉を開けて、すぐ注目してほしいのは、入口近くの左側の棚にある給水器。年月を重ね、鈍く光る銀色の大きな容器はどこか懐かしく、思わず見とれてしまいます。 カウンター後ろの棚には、長い間大事にされてきた食器たちが美しく並べられています。

東京の兜町にあった純喫茶「may」 by

 こちらでぜひ注文して頂きたいのは「チャンポン」というメニュー。
その昔、まだカフェオレというものが一般的でなかった頃からこの界隈で親しまれていた、珈琲を牛乳で割ったものです。
細長いカップも珍しく、ぽってりとした手触りが癖になります。

東京の兜町にあった純喫茶「may」 by

 窓の向こう側に流れていたという川に思いを馳せながら、マスターとの会話を楽しみ、ゆっくりと過ごしてみるのはいかがでしょうか。

東京の兜町にあった純喫茶「may」 by

 営業は11/30(水)まで。訪れた方へ素敵な時間をお約束します。

Text/難波里奈

※2016年11月11日に「SOLO」で掲載しました

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