…とはいえ、気軽になんて行けない

どうやら診察では、状態確認と子宮のエコーをとっていたようだった。自分の身体に何の異変もなかったことに安堵しつつも、一瞬の出来事がとにかくショックで、医師の話に気の入らない返事をしながら涙を必死にこらえる。みんな、きっとこの行為を平然な顔をして耐えているんだ。普通の人にできることが、どうして私には耐えられないんだろう。自分のことをみっともなく思い、こんなにも負の感情で心が埋め尽くされているのは、自分に女性としての自覚が足りないからだと思っていた。涙が落ちないよう、歯を食いしばる。
自殺をしてしまう人は、前々から自殺を計画しているパターンよりも、ふっと「あ、もう死んでしまいたい」と思い、自ら命を絶つことが多いらしい。この時の私も同じような気持ちだった。すぐにでもこの世から自分の存在を消してしまいたい人の気持ちが、よくわかる。
Twitterを見ていると、婦人科の検査に辛さを覚えるのは私だけではないらしく、少々安心をする。慰めの言葉、共感の意見ももらった。みんな同じだった。あの辛い検査を乗り越え、暮らしているのだ。

私にとって、今回の検査は大きなトラウマになったように思う。次、同じように2か月生理が続いたとしも、婦人科に行きたくない気持ちの方が勝って今以上に行動に移せないかもしれない。
ああ、だからか、と思う。子宮がんや子宮内膜炎をはじめとする病気は気づきにくいこともあるが、私と同じように身体に異変を感じてもどうしても足が遠のいてしまうのだろう。テレビに出ている産婦人科医は「異変があればすぐに病院へ」と言うかもしれないけれど、気軽になんて行けない。また同じような気持ちを味わうのなら、少しくらい我慢していたほうがマシだ、そう思ってしまう。
でも、もしかしたら担当してくれた医師との相性がよくなかったのかもしれない。何をするのか事前に説明をしてもらい、事務的ではなく、もう少し言葉をかけてもらえれば何かが違っていたかもしれない。そして私も初めてで不安だと言えればよかったのかもしれない。

病気にならないため勇気を出して向かったのに、何か大きなものに心を折られてしまった感覚だ。こんな気持ちになる人が、少しでもいなくなればいいのに。

Text/あたそ