バーで知らない人に話しかける?全身で拒否してるのに、なんなの!

新宿のゴールデン街での出来事です。その晩、AV監督をしている男性の友人とわたしとが訪れたのは、L字型のカウンターだけのバーでした。カウンターの内側のスタッフの女性と、ちらっと世間話を交わしつつ飲める、いかにもゴールデン街らしいお店で、店内は週末ということもあってとても賑わっていました。けれどもツイていることに、ちょうど我々が訪れた時には、奥の席が二席空いていたので、そこに案内してもらい飲み始めた。

その夜は、仕事とまではいかないけれど、ちょっとだけ込み入った話を知人男性としたかった。酔わないうちにさっさと終わらせて、あとは心置きなく飲もう。そう思って早速本題を切り出したところ、知人男性もちょうどその話題をしたかったようで、すぐに話が盛り上がっていたところに、知人男性とは反対側、わたしの隣に座っている見知らぬ男性が相槌を打ちつつコメントを従えて会話に入ってきた。

知人と議論がしたいのに…

ゴールデン街って、その場に居合わせた人たちと会話で盛り上がることも多々あるし、意気投合して一緒に二軒目に行くことも珍しくない。だから、話しかけてくること自体は失礼だとは決して思わないし、むしろ一人で飲んでいる時には相手してもらえると助かることもある。が、その日のわたしの状況はちょっと違った。知人の男性と論議して、帰るまでにある程度の道筋をつけたいという思惑があったので、見知らぬ人に構っている暇はない。

AV監督と、エロ系のライターという組み合わせにちょっと興味を抱いたのかもしれないけれども、そんな組み合わせは、ゴールデン街ではありがちだし、そもそもこっちは自分のお金で飲んでいるわけで、その男性に対応するかしないかを選ぶ権限はある……なんていうのは実は言い訳で、本当は男性の態度があまりに馴れ馴れしすぎて、ちょっと嫌だなぁというのが本音。よくも悪くも空気を読んでほしいというか、あからさまに背中を向けた体勢を取り、全身でコミュニケーション拒否の体勢を取ってるのに、なんなの! しかも、割って入ってくる内容がいちいち「俺の見解」なのが困る。お前の話なんかどうでもいいんだよ。そもそもが、男連れの女に話しかけるなんて、失礼じゃないか……という話を先日、別の知人に男性に愚痴っていたところ、「でも、あなただって俺とゴールデン街にいった時に、知らない男性に話しかけてたじゃない」と首を傾げられた。リターン! ガビーン!

飲み屋の振る舞いの正解は?

確かにわたしもバーでは、男女構わずに居合わせた人にわりと話しかけがちで、それを迷惑に思った人も過去にはいたと思う。だって「早口先輩」の異名を取るオバサンですよ! ウザいでしょ!!! でも、いいムードでイチャイチャしているカップルやウェイウェイ盛り上がっている若者の集団にはもちろん、内輪の話で盛り上がっている人たちにだって話しかけたりしない。そりゃ若い頃は「若い女の子だから」と多少というかかなり驕っていたことは認めますけども。

会話には入れたくない人を排除するのも、なんだか意地悪して仲間外れにしているような気持ちになってしまうのも後味が悪いし、なんだかなぁと思ったのでした。飲み屋での振る舞いって正解がないからこそ、難しいですね。

Text/大泉りか