日本では人工子宮の方が早そうな理由

ところで、小説の中には人工胎盤を3Dプリンターで作ったなどという話題も登場する。これが希望なのか、新たなディストピアの始まりなのかはわからない。が、日本では代理母が認められるよりも、人工子宮が普及するほうが早いかも……と私は思った。代理母は妊娠出産をする女性側に高いリスクがあり、貧困女性の搾取にもなりかねないが、人工子宮だとそのあたりの問題は全てクリアになる。ファッション誌で炎上してしまった対談も、出産をお願いする生身の女性がいるから批判されてしまったわけで、産むのが比喩でなく「機械」であれば、キャリアを中断したくないからという理由で自分の体での妊娠出産を避ける女性がいてもOKなのかもしれない。

素人ながら、人工子宮は私たちが100歳になる頃には普及していてもおかしくないと思う。そうなったとき、私たちの価値観はどのように変わるだろうか? ボリューム大の『燕は戻ってこない』、長編小説だけど一気に読めてしまうので、いろいろな立場の人が手に取ってみるといいと思う。

Text/チェコ好き