結婚出産がひとつの「性癖」になる日まで

男女カップリングの二次創作界にいると、よく「結婚して子育てをしている幸せな二人が見たい」という声を女オタクたちから聞く。もちろん「見たい」と言っているだけならオメガバースや触手と同じただの性癖なのでいいのだが、「結婚と子育て以外に幸せなゴールはありえない」「それ以外はすべてバッドエンド」までいく空気を感じると、そんなことないと思うけどな……と、個人的にはちょっと切なくなってしまう。同時に、同じ作品の二次創作界に長くいるベテラン作家ほど、いろいろマニアックな作品を読みすぎて感覚が麻痺してくるのか、この「結婚して子育てをしている幸せな二人が見たい」という願望は薄れている気がする。「結婚と出産」という王道もいいけれど、やっぱり、雌雄同体や剃毛や女装やSMや、いろいろな性癖が私たちの可能性を広めてくれる……と、私は真面目に思うんですけどね……。 

来年も、私は二次創作の話をすると思う。もちろん推しカプのことが大好きだからだが、様々な年代の女性たちを観察していると勉強になるという、メタ的な楽しみもある。結婚と出産以外にもカップルの幸せはあること、子供を産んだあとも自分の時間を精一杯楽しめること、何歳からでも新しい趣味を始められること。そんなことを、来年も語らせてもらいたい。

『ノルウェイの森』で主人公は直子と添い遂げることはなかったけど、彼の人生で直子の存在はとても大きく、思い出はずっと生き続ける。これもまたひとつの性癖に違いないけれど、カップルのゴールが死別を含めた「別れ」であったとしても、本人次第で、それはとても尊いものになるのではないだろうか。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

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『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはずです。