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  • 2012.07.18

第6回:『やまとなでしこ』は女のしたたかさを肯定する救済ドラマ?

「愛は年収」と言い切った異色の恋愛ドラマ

Fly Me to the Moon By kudumomo
©Fly Me to the Moon By kudumomo

 みんな、どう? 最近、玉の輿に乗ってる?

 こんにちは、先週をもって「モテ系リア充ライター」の肩書きを返上した福田フクスケです(歯をくいしばりながら)!
さて、今週も往年の恋愛ドラマをあえて見直し、勝手に深読みしていきましょう。

 今回のテーマは、松嶋菜々子演じる、お金持ちとの結婚に執着する主人公の強烈なキャラクターが話題を呼んだ、1999年の月9ドラマ『やまとなでしこ』です。
 このドラマの主人公は、類まれなる美貌を持ち、教養があって仕事もこなせるフライトアテンダント・神野桜子(松嶋菜々子)。  
 一見、非の打ち所のない彼女ですが、幼少期の極貧体験がトラウマになっているせいで、 “この世で一番嫌いなものは貧乏。女を幸せにしてくれるのはお金だけ” という極端な考え方を持つ歪んだ性格になってしまいました。

 彼女は、大金持ちの男性との玉の輿結婚を夢見て、夜な夜な合コンの鬼と化します。 大病院の御曹司・東十条司(東幹久)を一応の本命として付き合っているものの、「結婚の前日まで、よりよい条件の男を探し続ける」と明言。 徹底した打算と周到な演出で、狙った男性を確実に落とすことに余念がありません。

強烈な「桜子語録」の数々に男はビビった!

 このドラマの見どころは、そんな桜子の恋愛観・結婚観を表わす、あけすけすぎるセリフの数々。

「借金まみれのハンサム男と裕福な豚男、どっちが結婚して女を幸せにしてくれると思いますか?」
「心なんて綺麗事言ってたら、一生貧乏から抜け出せない。貧乏人を幸せにしてくれるのはお金、お金だけ」
「女が最高値で売れるのは27。私の統計では27歳が売り時のピークなの。それを越えたら値崩れを起こすわ」
「結婚式の披露宴は最も成功率の高い合コンよ」
「マンションで男が釣れる? 洋服、洋服よ! 洋服が最大にして最良の武器なの」


 ドラマの主人公は、誰からも愛されて、共感を得られる人物造形にするべし。
ひと昔前のシナリオ教則本にはそう書いてあったものですが、桜子の強烈なキャラクターは、それとは真逆の憎まれ役。口が裂けても「共感できるー!」とは大きな声で言えないようなキャラクターです。

 にもかかわらず、このドラマは月9ドラマ枠で久々の視聴率30%超えを果たすヒット作となりました。ひょっとして、世の女性たちの本音って、みんなこんなだったの……!?

“お金目当て”と“性格目当て”はどう違う?    

Money By 401(K) 2012
©Money By 401(K) 2012

 もちろん、桜子が世のすべての女性の代弁者、というつもりはありません。 それに、視聴者が恋愛ドラマに理想の恋愛観を投影するような時代は、この頃とっくに終わっています。 当時の私たちは、リアリティがなくたってマンガ的な世界観をエンターテインメントとして楽しめるくらいには、すでに成熟していました。

 とはいえ、「結婚するなら、経済力のある男性に越したことはない」というのも偽らざる女性の本音のひとつ。 このドラマは、「結婚とは、若さと美貌を求める男性と、経済力を求める女性との等価交換によって成り立っている」というシビアな側面を、コメディタッチのエンタメに徹して大胆に描いたところが、多くの視聴者の支持を集めたのでしょう。

そしてもうひとつ、このドラマは恋愛・結婚における本質的な問いかけを私たちに投げかけました。 それが、桜子の以下のセリフです。

「じゃあ聞くけど、どうしてルックスや性格で男を選ぶのは褒められて、お金で男を選んじゃいけないわけ? 身長や顔や性格は、生まれながらのものよね。(中略)でも、お金持ちになれるかなれないかは、本人の努力次第でどうにでもなるじゃない。 (中略)だとしたら、私の選び方のほうがより公平な評価ができると思わない?」

 性格で男を選ぶのも、お金で男を選ぶのも、「選ぶ」ことに変わりはありません。 そして、ひとりの人間をなんらかの条件付けをして「選ぶ」という行為は、きれいごとではなく、必ずどこか「打算的」で「利己的」なものですよね。
 優しさや誠実さといった性格で男を選ぶという女性だって、
「自分が楽しい思いをしていたい」「自分が安心できる相手と一緒にいたい」
「自分が損をしたくない」という意味では、打算的であり、利己的なのです。

したたかだって、いいじゃない!

 『やまとなでしこ』は、貧乏だが純粋な中原欧介(堤真一)と出会うことで、桜子が「お金より大事なもの」に気付いていく物語です。
その劇中、桜子のいわば恋敵として登場するのが、塩田若葉(矢田亜希子)という女性でした。
欧介の人柄に惹かれ、献身的に彼にアプローチする彼女は、桜子とは対照的な「お金より心」派。

でも、欧介の稼業である魚屋を手伝ってちゃっかり彼の母親に気に入られたり、自分に構ってもらえなくなることを嫌がって、彼が数学の研究に戻ることに反対したり、彼女もまた、ある意味したたかで打算的な面を持っています。
本作の脚本家・中園ミホさんは、桜子の中にも若葉のようなけなげさがあり、
若葉の中にも桜子のようなしたたかさがある、と自身のエッセイで語っていました。

つまり、どんな女性にも桜子と若葉の両者が共存していて、純粋さとしたたかさは表裏一体で区別がつかない。
そして、恋愛とはそういうものだし、それでいいのだ、と言っているわけです。
これが、『やまとなでしこ』の前向きで肯定的なメッセージではないでしょうか。


恋愛をすると、どんな女性も自分の打算的で、したたかな部分と、必ず向き合わなければいけません。
自分はそんな女じゃない、と思いたい女性ほど、自分のエゴのために誰かが選ばれたり、選ばれなかったりする事態に直面して、そんな恋愛をする自分を「ずるい」「きたない」「見たくない」と思ってしまいがちです。

でも、それではいつまでたっても一人の男性を選ぶことはできませんし、
「きれいな自分」のイメージを守るために、自分から男性を手放してしまったりするでしょう。

自分の「ずるさ」を引き受けなければ、恋愛はできません。
そこで立ち止まってしまったときは、ぜひ『やまとなでしこ』を見てみてください。
桜子と若葉の生き方に、女のしたたかさを肯定する救いのヒントが隠されているかもしれませんよ。

Text/Fukusuke Fukuda

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ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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