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  • 2014.10.04

『ラブ・アクチュアリー』監督の引退作!タイムトラベルが教えてくれる愛と家族の物語『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』

 生きていると思いがけない傑作に出会うことが稀にある。
人はいずれ死ぬ。永遠なんて存在しない。それを踏まえた上で、この映画が堂々と“愛”を語るのなら、ふと立ち止まって人生を顧みたい。

 あの日、あの時、あの人に出会っていなければ。あの言葉を告げていれば。笑っていれば。手を繋いでいれば。気にかけていれば。
一つのタイミングと一つの判断で出会い、別れる。人生はいつも“一度きり”を続けている。立ち止まることがない。
でも、この映画は許されている。人生のある時間を何度も戻り、やり直すことができることを。

 恋はやがて愛になり、愛は家族を作り、家族は人生そのものになる。
単なるラブストーリーと思ったら大間違い。涙なしでは観られない。
夢見るファンタジーと現実的なラブストーリーが融合した、全く新しいSFラブストーリーが誕生しました。

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© Universal Pictures

 リチャード・カーティス監督は今まで、『ラブ・アクチュアリー』『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』と数多くの傑作を手掛けてきたが、本作が引退作となる。 「映画監督としての集大成にしようと思っている」と明かし、それに相応しく「家族」がテーマになっています。

 主人公の冴えない青年・ティムを2015年公開予定の『スター・ウォーズ:エピソード7』に起用されることで話題となったドーナル・グリーソン、彼が一目惚れする恋人・メアリーを『きみに読む物語』『ミッドナイト・イン・パリ』 のレイチェル・マグアダムスが演じます。
ティムの父親役を『ラブ・アクチュアリー』でイギリス中の映画賞を総ナメしたビル・ナイが演じ、単なるラブストーリーに落ち着かず、その先にある「家族」の物語が描かれています。


取り戻せない“愛おしい時間”の大切さ


 【簡単なあらすじ】
 自分に自信が持てず、女性と縁がない青年・ティム(ドーナル・グリーソン)。21歳の誕生日、父親(ビル・ナイ)から一家の男たちにはタイムトラベル能力があることを告げられる。

 恋人を作るためにタイムトラベルで何度も時間を行き来するティムは、ある日魅力的な女性・メアリー(レイチェル・マグアダムス)と偶然出会う。
しかし、友人の大きな失敗をやり直すために巻き戻した時間ではメアリーと出会っていなかったことになってしまい、彼女と再び出会う手がかりを探す。

 やがてティムとメアリーは出会い、愛し合い、結ばれる。幸せな家庭を築いてからもなお、タイムトラベルで人生の成功を掴もうとするティム。だが、どんなに時間を戻してもやり直せないことがあることに気付く——。

誰だって失敗を何度もやり直したい


 やべっ、いけないこと言っちゃった→やり直し。あっ、変なところでつまづいちゃった→やり直し。

 羨ましい。人生のある瞬間をタイムトラベルで何度もやり直し、“完璧な一日”を作り出せるなんて。一目惚れしたメアリーとの会話が失敗しても、何度でもやり直す。上手くいくまでやり直す。セックスだってやり直す。
些細なことから大きなことまで、失敗を成功に変えるために何度も何度も時間を行き来する。その様は共感を呼び、笑いに満ち溢れている。

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 誰もが失敗する前に戻りたいし、人生を最高のものにしたい。とはいえ、自分のことだけでなく、友人や妹の失敗までやり直してあげるのがティムの良いところ。観ていると次第に彼に愛着を抱き、応援したくなる。彼が幸せな家庭を築いていくことが、まるで自分の幸せになるような気分に。

 このような“ワンチャンス”をツーにもスリーにもする夢のようなお話でも、現実的な描写がきちんと存在する。それは、人がいずれ死ぬこと。人生は一度きりしかないこと。これらの事実に直面する時、ティムはどうするのでしょうか。


“愛おしい時間”から人生のタイムリミットを感じる


 ティムはある時から、タイムトラベルに頼らずに生きることを決める。それは過去を顧みずに生きていく強い決意。それはSFから遠く離れた現実に生きる我々が、過去を振り返らずに今を生きることにも似ている。

 映画としても人生としても、本作には「家族」の理想が詰まっている。「家族」を分解すると、そこにはティムとメアリーの出会いから、デート、愛し合う時間、結婚式、子どもが生まれるまで全部散りばめられる。

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© Universal Pictures

「こんな人生を送りたい」「こんな映画が観たかった」
この映画は、すべての夢を叶えてくれる。人生において“時間”がいかに重要かを声を大にして叫んでいる。それも優しく、控えめに。

 リチャード・カーティス監督がこれを引退作にした理由を考えると、胸が締め付けられる。
すべての愛は全部、ここで描かれる「家族」にあるのでは。これが恋愛映画の一つの到達点とすら思える、それくらい傑作なのだ。

 メアリー、子どもたち、父親と母親と妹の愛おしい笑顔。これらがすべて永遠にあるとは限らない。タイムトラベルを何度繰り返しても、時計の針は進んでいる。それがいつか止まってしまう。

 ティムが味わう“愛おしい時間”から、人生のタイムリミットを感じる。恋人、家族、自分。
ありふれた“時間”と、かけがえのない“時間”を行き来することで、いつか無くなる全てのものへこの映画は投げかけているのです。

かけがえのない、たった一度きりの出会い


 人生の時計の針が止まる時、誰の顔を思い浮かべるのでしょう。
現実は映画のように巻き戻しができない。だからこそ、この映画を観るとたった一度きりの出会いを大切に思う。

 ここで描かれる「家族」を忘れたくない。ティムの頼りない笑顔も、メアリーの愛くるしい笑顔も、1年後、5年後、10年後、30年後に繰り返して観たい。
それこそ、タイムトラベルするように。




全国公開中!

監督:リチャード・カーティス
キャスト:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー、リンゼイ・ダンカン
配給::シンカ/パルコ
原題:ABOUT TIME/2013年/イギリス映画/124分
URL:映画『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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たけうちんぐ
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