「三ツ組盃」
次は『三ツ組盃」(刊行年不明)という性典物に書かれている「女郎に情をうつさせる法」つまり「女郎と恋仲になる方法」についての内容を一部紹介する。
女郎ハ気の行かないように稽古をすれば、それが常となりて、いかほど惚れた男というとも気が行くことはない。
横になると女性の枕の下に自分の左の手を入れ、右の手で女性の帯を解き、湯文字(腰巻)をまくり、足を割り込み、じっと締め付け口を吸う。
湯文字も結び目を解き女性の右足を自分の足の上にあげる。
女性の左足は自分の両足ではさみ相手の股の割れ目を中指でそろりそろりと触り、唾をたっぷりつけて指を挿入し粟粒のようなところを探しくるりくるりと指を回す。
中指の腹でのの字を書くべし。少しずつ力を入れ上へ撫で、またクリクリと回し口を吸い気が散らないようにすること。
挿入するとゆっくり腰を動かしだんだんと毛の生え際まで挿入する。
女性が寝巻の袖を顔に当てて口を結び鼻で息をする時は気の行きかかっていることを知るべし。また唾をつけて、ぬるぬるするようにして、実核(クリトリス)をいじること。
自分(客)も気をやること。後に残ることは甚だ悪し。
先ほど紹介した『男女狂訓 花のあり香(だんじょきょうくん はなのありか)』とは異なり、ストレートに相手の気を行かせたいという角度から書かれている。
誰を対象にして書かれているかによって、同じ営みでも内容が違ってくることは興味深い。
お客によっては女郎の間夫(まぶ。遊女の情夫)になりたい方もいたようで『懐宝秘伝 真情指南』の「傾城に精を漏らせるとぼしかた」では、どのようにすれば女郎が自分と会うことを楽しみにしてくれるようになるかを書いていたりもする。
一回のセックスの質を高めて回数を減らしたい女郎と、女郎に好きになってもらいたい客。
今回紹介している江戸期の性典物の内容を読んで分かるように、「これは共感できる」「これは喜ばしくはない」などの様々な感想もあると思うが、「江戸期にはこのような悩みがあり、このような本が存在したんだ」、「このようなテクニックについて書かれていたんだ」という興味深い古典籍に触れたという感覚で知っていただければ幸いです。
しかし私たちが生きる現在は「江戸から地続き」でありことも、もちろん忘れたくはない事実です。
Text/春画―ル
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