クリエイターと演者は理解しあうことが難しい
よく、クリエイター…裏方と演者間で取り沙汰されることは、どちらも相手の立場を100%理解できないというものだ。役者だけやっている人には脚本家の気持ちは分からないし、作曲だけをしている人にはアイドルの気持ちは分からない。というよりも、分からなくて当然なのだ。どの業界にも言えることだが、その人の立場になってみない限り、どれだけ細かな経験談を教えたところで完璧な理解なんて不可能。逆に理解できる方が怖いぐらいだ。実体験を話せば、私は超短期間だけ某女性向けメディアの運営を行っていたことがある。そこはインタビュー記事をメインとしたメディアだったため、インタビュー相手へのアポ取りから、取材・執筆・写真撮影・編集・リリース等を全部自分で賄っていた。その経験をする前までは、取材や担当編集者さんとのやり取りはあるものの、“全部丸投げ”のほうが圧倒的に多かった。それがいざ自分が裏方になって動いてみれば、相手方とのスケジュールやリリース日の調整だけでも上手くいかないことがあったり、特に大企業相手となると週末に一切連絡が取れなくなって進行が遅れたりすることもあった。今まで自分が当たり前だと思っていたことが、実は色んな人の助けによって成り立っていたことを酷く痛感したのだ。
沙耶さんの話で言えば、水着を作っているし、それを着用して“魅せる”ことも行っている分、話の展開がとてつもなく早かった。「このデザインだと胸の形が綺麗に盛れない」「使う布の素材によっては、難易度が高くなる」など、どれも魅せることだけやっていたら言語化出来ないことだ。作業が進んでいってからのトラブルにも、迅速かつ、的確に対応してもらえたのも、やはり彼女の経験の賜物だろう。ここでも言えるのは、クリエイティブには、アクシデントが付き物だということ。クリエイターがどんな作品もあれよあれよと生み出してしまうなんて考えは、呆れてしまうほどの机上の空論である。いくら準備が整っていてもアイデアが出なかったり、環境に支障を来たし作業に取り掛かれなかったりすることだって少なくはない。しかし、最初からその前提があれば、「そういうこともある」と一回冷静にもなれる。焦ったところで納期は変わらないなら、感情的になっても仕方ないのだ。今回の水着制作でもそういったアクシデントがあったものの乗り越えられたのは、その前提が沙耶さんと共有出来ていたからかもしれないし、何よりも私が沙耶さんを一クリエイターとして絶大なる信用を寄せていたことに他ならない。何故なら、業界も生み出している物も全く異なるけど、0から1を生み出している者として、いつしか尊敬と仲間意識が芽生えていたからだ。
グラビア挑戦に疑問を持つ方へ
水着制作の他にも、グラビア撮影でのスタイリングやポージング指導などもしてくれた。どれもがとても素晴らしいものだった。あくまで仕事上とはいえ、ここまで私のクリエイトに他のクリエイターが協力してくれたことに何にも代え難い感動と誇らしさを覚えた。そもそも、ただのライターである私がグラビアに挑戦したことすら疑問を抱く人もいるだろう。だけど、“ライター”という肩書きを持っていてやってはいけない、やったらおかしいことなんて、実際には一切無い筈だ。むしろ肩書きに囚われず、自分の“好き”や“好奇心”を資本に取り組んでいった方が絶対に面白いに決まっている。その根拠こそがグラビアアイドル兼クリエイターの片岡沙耶であり、沙耶さんとの目覚ましい化学反応の結果こそが「Who am I ?」だ。私はそう胸を張って言える。
Text/マドカ・ジャスミン
◆マドカ・ジャスミン3/30初書籍発売!
タイトル:Who am I ?
著者:マドカ・ジャスミン
発売日:2018年3月30日
価格:1700円+税
仕様:A5版 168ページ
次回は<港区にはアイデンティティを霞ませる魔力がひそんでいる/マドカ・ジャスミンのチン道中>です。
ハイブランドのバッグ、予約の取れない高級レストラン、夜景が綺麗なタワーマンション… そんな華やかなイメージに憧れる未来の「港区女子」へ人気コラムニストのマドカ・ジャスミンさんが警鐘を鳴らします。港区の魔力に飲み込まれないためには、どうしたらいいのでしょうか?
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