女性向け「ポルノ」とは結局何か?――女性のマスターベーションとポルノグラフィ

連載タイトルの秘密

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 negativespace.co

 連載第20回にしてようやく触れるけれども、この連載のタイトルは「東大院生のポルノグラフィ研究ノート」である。
AM編集部から案があがる前に自分で考えたタイトルを提出したら、それがスッと通った。

 自分でわざわざ「東大院生」を名乗って、肩書きを徹底的に利用してやろうとするいやしさと、そのくせ“研究”ではなく“研究ノート”を名乗って「まだ考え尽くしてないけどこれで許してくださ~い(^^;」と甘える保身が見え隠れしている。
我ながら、コンパクトに私の性格の悪さをよく表した見事なタイトルである。

 では、「東大院生」と「研究ノート」にはさまれた「ポルノグラフィ」とは何か?
これまでの流れに沿って現実的な狙いを明かすと、もし対象を「AV」に絞るとネタ切れするだろうなと思って守備範囲を広くするために「ポルノグラフィ」にしたのだけれども、まあ私のずる賢さの話はもう終わりにしよう。
今回の本題は「ポルノ(グラフィ)」という言葉はいったい何を指すのか、ということである。

 私は、何の定義もしないまま、何だかよく分からない「ポルノ」というものについて19回も論じてきたということになる。
(いや、本当は「男女の友情」みたいに、「ポルノ」っぽくないものも論じてきたのだけれども。)

 しかし、みなさんもそれほど違和感なく、今まで読んできてくださったことと思う。
「ポルノ」とはどういう意味なのか、いったい何を指すのか。表面上は、私とみなさんとでお互いに了解しているように見えるが、本当だろうか?

 さて、「ポルノ」が法学上どう扱われてきたかとか、歴史上最古の「ポルノ」は何かとか、”pornography”という言葉の語源は何かとか、そういう側面からも論じられるけれども、そんな話を始めたら、ここからまたさらに連載を20回重ねることになるに違いない。
この回だけで論じ終えるために、「女性にとってポルノとは何か」という話に絞り、これをある2冊の本から考えてみることにしよう。