月野帯人というダイヤモンド

東大院生のポルノグラフィ研究ノート 服部恵典 東大 院生 東大院生 ポルノグラフィ 研究 公開生放送の様子

 開場してすぐに足を運んだつもりだったのだが、すでにほぼ満員状態で、会場は和気藹々とした談笑に包まれていた。
客層は30代後半ぐらいがおそらくボリュームゾーンだった。どうやら関東外から来た人もちらほらといたらしい。

 グループで座っている女性が多かったが、これは元々知り合いだったのではなく、「エロメンが好き」という共通項で新たに結ばれた絆なのだろうか。
女性が自分の性生活について話すのは社会的になかなか難しく、また同時に、大人になってから友達をつくるのも意外と難しいものだと思うのだけれども、実際にこうしてコミュニティが出来上がっているのだから、自分のことでなくとも嬉しい気持ちになる。

 さあ、スタートの13時になって主役の月野帯人が現れ、拍手が巻き起こる。
月野は、単独MCイベントが初めて行われてから約1年が経ったということで、第1回ゲストの清田代表(桃山商事)、第2回ゲストのChiyu(SuG)のことを振り返ることで最初のトークを始めようとするのだが、ゲストのことをまったく覚えていないのだ。
「よかった、今日もツッキーはツッキーだ……!」と感じる。快調な滑り出しだ。

 その後、今回のゲストである、お笑いコンビ・エレキコミックの今立進が登場。
彼もまたツッキーに忘れられるのだろう。可哀想に。
だが、流石は芸歴19年目。月野帯人の天然ボケマシンガンをすべて拾って返していく。
ぐだぐだなツッキーの司会ぶりを常に軌道修正していて、どっちがMCなのかわからないほどだ。

 今立が、初めて出会ったときのお互いの印象の話や、俳優・声優の宮下雄也と3人でトークライブを行った話で盛り上がっている最中でもツッキーは変に几帳面なところがあるから、無理やりギュンとカーブして台本通りのトークテーマに持っていこうとする。
急に、あの気の抜けた喋り方で「彼女から連絡がなくてガマンできるのは何日ですかー?」と今立に聞き始めるのだ。興味もないくせに。

 いやそうじゃなくて、もっと話のフリはだな……と、とうとう今立によるMC講座が始まったりまでするのだが、月野は絶対に今立の思い通りにはいかない。
しかし、何度でも言うが、そこがいいのだ。

 今立も当然、月野が最強のボケであることはよく分かっている。
イベント前半の生放送が、終わりに差し掛かってきた頃だろうか。
今立は月野のボケを捌いたあとに「すべてが新鮮だ!よかった!こんな逸材と出会えて!」と叫んだ。
「みんなからは砂利に見えてるかもしんないけど、俺にとってはダイヤモンドだぜ!」と。

 そのとき、あの日一番の拍手が会場を包んだ。
今立含むその場の全員が、ずっと前から知っていたのだから。彼こそが自分にとってのダイヤモンドだと。
照明と、今この場だけ少女に戻ったかのような観客の視線を浴びて――汗かきだからだろうか、きっとそれだけではない――月野帯人はきらきらと光って見えた。