――成人映画っていうとまず「日活ロマンポルノ」っていうイメージがあるんですけど、もともとピンク映画という土壌はあったんですね。

高木:そうですね。でも、それらのピンク映画は低予算で製作されていて、本編は基本モノクロで、カラミの部分だけカラーになるようなものだったんです。日活ロマンポルノは全編カラーにして、低予算ではあるけれども従来のピンク映画よりはお金をかけて作った。日活には撮影所があり、衣装やセットが使えたっていうのも、作品のクオリティがあがる要因だったと思います。

――実は私、思春期の頃一度ロマンポルノに触れてるんですよ。父親が押し入れの中に隠し持ってたエロビデオの中に日活ロマンポルノがあって。エッチな映画だと思ってドキドキしてたのに、実際に観てみるとコメディがあったり、不条理があったり、最後にはみんな死んじゃうような悲惨な話があったりで、すごく衝撃を受けたのを覚えてます。ロマンポルノってヌキ重視じゃないですよね。ストーリー重視というか世界観重視というか。

高木:そうですね。ロマンポルノを始めようってなったときに、会社に残ったのが「どんな状況でも映画を作り続けたい」っていうスタッフ達だったんです。大スターたちの映画を撮っていた監督やカメラマンなど、一流のスタッフもたくさんいた。そして、上の世代が会社を辞めていったことをチャンスと考えて、面白い映画を作ろう!と燃える社員もいたんです。
あと、映画のターゲットは男性でも、ロマンポルノの主演はほとんどが女優さんじゃないですか。その頃の女優さんにとって、自分の裸が拡散してポルノ女優というレッテルが貼られてしまうロマンポルノは、出演を決めるのが今よりもハードルが高かったんだと思います。だから、女優陣が出演してもいいと思える物語を作らなきゃっていうのはあったんじゃないでしょうか。