「昨日、お尻に腕までズボズボ入っちゃった。もう最近ただのタチじゃ物足りないんだよね」
ジャズがかかる昼下がりのカフェで紅茶を飲みながら、二十歳になったばかりの友達が大声で朝まで続いたというセックスを一部始終話してくれた。
アラサーのあたしは、目を丸くしてそんな彼の話を黙って聞いていた。

 フィストファックなんて都市伝説だと思ってた自分からすれば、彼の話に挿入できるネタなんてない。
カップに残った紅茶を注ぎながら、「どうしてそんなことしようと思ったの?」と思わず聞いたら、彼は「どうしてしないの?」と返した。どうやら、彼はその質問の意味を理解しなかったようだ。

 その次の日、タオル一枚で「準備はいい?」と真剣な面持ちで彼氏に問いかけた。
バイブレーターとローションをぎゅっと握って、ふたりでベッドにジャンプした。「マジでこれ入れるの?」「え?自分から入れたいって言ってたじゃん」とぎこちないやり取りを繰り返しながら、あたしは期待と後悔の狭間に揺れていた。
そうこうしているうちに、ブォぉぉぉーンっと激しく振動しながらそれが入ってきた。バイブバージンを卒業した瞬間である。

「どう?」

 彼が目を輝かせながら聞いてくる。

「ちょっと黙ってて」

 予想以上の快感を邪魔されて、少しご機嫌斜めなあたし。

 バイブレーターがこんなに気持ちよかったなんて思ってもみなかった。
今なら「ビビビ」婚をした松田聖子の気持ちが少しわかる気がする。
こんな年になるまでバイブレーターを試さなかったことを少し後悔したが、そんなことを忘れるくらいこの瞬間が生き生きしていた。
1時間後、汗をだらだら流しながら彼氏と寝転がってセックスの余韻に浸っていた。こんなに燃えたのは久しぶりだった。
携帯を手に取って、プレゼントをくれた友人に「ありがとう。とても気持ちよかったよ」とメールした。