なんで喘ぐ大根を作ったの?
―――えつこちゃん、こんばんは。今日は喘ぐ大根についてお話伺えればと!さっそくですが、なんでコレ作ったの?
市原えつこさん(以下、市原):作ったのは、デジタルメディア論のゼミに入っていた大学3年生の時で、そのゼミ内で制作しました。本来はメディアアート研究を行うゼミのはずだったんですが、ちょうど担当教員の方が海外研修中で、その代理がアーティストの先生だったんです。だから、メディアアート「研究」より「実践」に趣旨が変わって。
その先生の教育方針が「その人それぞれの妄想や偏愛を育てる」というもので、その時に自分は何が好きなのかをすごい分析していて、どうやら私は肉感的なモチーフや土着的な風習が好きっぽいなあと気がついて(笑)。
―――肉感的ってのは?
市原:ヌードデッサンをやっていたころにも感じていたのですが、人体の曲線の面白さなど、肉感的なフォルムのものに妙に惹かれていました。その時にわけあって性文化に興味を持っていたこともあり、どんどん自分で自分を突き詰めていこうというこじらせたモードに入っていって秘宝館にいきました。
―――なるほど。秘宝館どうだった?
市原:いやあ、馬鹿だなあ!と感動しました。ぐるぐるハンドルを回すとマリリンモンローのスカートがあがる装置とか。王座がいっぱいあって座るとランプが光ってランプの裸の妖精がでてきたりとか(笑)。無駄に金はかかっているのに、アナログ感が溢れてる感じもよくて。バカバカしいのに何かいいっていう。
当時見てたメディアアートとかも洗練された表現のものが多くて、かっこいいなあと思いつつ、そうではない日本らしいインタラクティブアートって、もしかして秘宝館なのかな?という妄想に憑りつかれた感じでした。
―――すごく同感(笑)。鬼怒川の秘宝殿もなくなってしまったけど、ああいうのいいよね。
市原:うん、民間から生まれたクレイジーな風習はものはすごくいいなあと思ってて。それがきっかけになってエロとテクノロジーで何かやっていこうと思って、ゼミの発表で「セクハラ・インターフェースやりたいです」ってプレゼンしました。みんなひいてたんですけど、そのときに渡井大己さんという先輩がなぜか共感してくれて、スタートしたんです(その時から現在までセクハラ・インターフェースを一緒に作っています)。
彼は商学部で、回路設計とかはじめてだったのに、ゴリゴリ身につけていってセクハラ・インターフェースのプロトタイプができて。それが発展してできたのが「喘ぐ大根」でした。
―――渡井さん凄いね。プロトタイプから大根だったの?
市原:いや、当時は見た目が違ってて、ストッキングに綿をつめて肉感的な感じにして、局部に手を近づけると喘ぐってものだったんです。ただ展示をするときに主催の方から変更以来がでました。百歩譲って声はまだいいが、見た目はどうにかしてくれというお達しをいただいて。
そこで次は花でやってみたんです。でも、花はすぐしおれてしまい、代替品を探した結果大根になりました!
―――見てみたかったなプロトタイプ(笑)。見た目を変えてっていわれた理由はなんだったの?
市原:いや、単純に卑猥だったからです(笑)。当時は、ピンク色のシリコンのボックスから生脚がヌッと生えているという見た目で、割と直接的な表現だったんです。自分も作品作りは初めてだったのでわからなかったんですが、先生に言われたのは、「うまいことメタファー(比喩)にした方がいいかもね」と。見た目がエロいものが喘いでも面白くない、そこに飛距離がある方が面白いと言われていたのかなあと。
当時はよくわかってない部分もあったんですが、今思い出したらその通りだなあと思います。
―――そこから、なんで大根だったの?
市原:いや、直観です。大根は間違いなくないっすか!って。渡井さんも、「間違いない。これは大根だね!」ってなって。胡瓜でも茄子でもなく直観で大根だったんです。でも直観はあってたのかも。
最近、現代魔女の谷崎瑠美さんという方に教えていただいたのですが、歓喜天という性と関係の深い神様を祀る神社では、大根がお供えものだったりするそうです。大根が性のモチーフとして使われているらしく。