距離感を間違えて剛速球を投げない

本物のコミュ症は「初対面でタメ口」という初手殺し(自分を)をやったりするが、そこまでいかなくても「初対面で言うべきではない話題」を出してしまっていることは良くある。

つまり、気ごころ、どころか、鼻毛の本数まで知れている相手にだけやっと通じるギャグを初対面の相手に言ってしまったりするのだ。
昔、通っていた専門学校の自己紹介で「イラストを描くのが趣味です」と言ってエロゲーヒロインの自作イラストを披露した御仁を見たことがあるが、何ら笑えないものがある。

常人であれば距離を詰めてから出すような話を、コミュ症は5キロ先から剛速球で投げてくるため、投げられた相手は避けるしかないのだ。

このやらかしは、個人間だけではなく、最近は「企業アカウント」でも見かけるような気がする。
企業アカウントのつぶやきというのは、お客様に向けての発言である。
それを理解せず、中の人が「アナルのシワの本数まで知れた親友相手のみに許されるゼロ距離ジョーク」を投下してしまい炎上するという事案が去年相次いだような気がする。
相手との距離感を間違えた発言というのは時に株価まで下げるのだ。

また言葉のチョイスというのは、相手との距離感もだが「好み」も読まなければいけない。
ちなみに「距離」も付き合いが長くなれば縮まるというものではない。
自分がどれだけ距離を詰めようとしても、相手が同じだけ後退したら永遠に縮まらない。
さらに仲良くなったからと言って、どんな話題を出してもいいというわけではない、どんな相手だろうと下ネタは話したくないという人も少なくはないのだ。
そういう相手の好みを読まずに、仲良くなったというだけで、エグい下ネタを繰り出し、相手が引いたら「私たちの仲じゃん」となどと言ったら、せっかく詰まった距離が振り出しに戻ってしまう。

コミュ症というのは「下ネタが嫌いな人間などいるわけがない」と、相手の嗜好を読まずに、自分を基準に話題を選んでしまいがちなのである。

隠語や際どい冗談を言いあうにはまず関係性を築き、さらに相手の嗜好を理解した後でないといけない。
それを考えるなら夫婦と言うのは付き合いも長く、お互いの嗜好も知り尽くしているはずだろうから、陰語と二人以外誰も理解できないギャグが飛び交っているのだろうと思うかもしれない。
しかし先ほどからずっと考えているが、私と夫の間で使われている陰語というものが何一つない。
さらに、私は未だに夫にウケるギャグがわからないし、私の言った冗談は大体ドン引きされている。

やはり関係性の構築も相互理解も長く一緒にいればできるものではないのだ。

Text/カレー沢薫

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