夫によく見る動画を聞いたら意外なことがわかった「夫婦で見るyoutuber」/カレー沢薫

令和3年にもなって、そんなことを言う人はもういないとは思うが、ひと昔前まで「ロボゾンビ新幹線ザウルスくのいちマックスⅡ」みたいな、どちらかというと男が好みそうなコンテンツを女が好きというと「女に『くノⅡ(略称)』の良さがわかるとは思えない」「どうせ彼氏の影響だろ」と言う人間がいた。

女にE2系や由美かおるの良さがわからないと思ったら大間違いだが、こういった「これは俺たちのもの」という選民思想は誰の心にもある。

自分もリア充に「オタクキモい」と言われたら「ファっ!これは手厳しいですな!フヒヒ…サーセン…」とむしろちょっと嬉しそうにしてしまうが、逆に「あーしもゲームとか漫画とか好きなんすわー」と歩み寄りを見せられると突然「この港を取り仕切っている者」の顔になって「はいはい鬼滅鬼滅、原宿に戻ってママのタピオカで吸ってな」と「一緒にするなムーブ」をかましてしまう。

人間誰しも、自分の「一家言あるジャンル」の話になると早口マウンティングゴリラになりがちなのだが、根底にあるのはやはり差別意識だし、そういうウザい古参が1人いるだけでコンテンツの寿命は3年縮むと言われている。

自分の聖域を食い荒らすにわかを駆除しているつもりで、自分が一番界隈にラウンドアップを撒いているのだ。

そういう、キスするつもりが唾を吐いていたような、俺たちの大好き推しカプイメソン状態にならぬよう、何かを好きになるのに、資格はいらないし、好きは優劣を競うものではないということを忘れないようにしなければいけない。

それ以前に「彼氏の影響」で車やゾンビを好きになるのが悪いことなのだろうか。

むしろ、今まで全く興味がなく、むしろ長年偏見を持っていたものに「これチョーエモいんだわ」と、つきあって3日の男の一言で食わず嫌いを克服してトライする気になれるなら、それは素晴らしいことである。

世の中には「俺ゾンビ好きなんだよね」という他人の好きの表明に対し、「何がおもしろいのか全然わからない」と、わかっていない上に黙ることもできないという、三歳児の返答をせずにいられない人もいる。

そんな人間よりは、自分の恋人や家族が好きと言っているものを否定せず、興味を持ち、自分も好きになってしまう「影響を受けやすい人」の方が絶対つきあって楽しいはずである。

せっかく自分以外の人間と深く付き合うのだから良い意味で相手に影響され、視野を広げて行った方が良い。

では我々夫婦がお互いに影響しあって視野を広げているかというと、趣味に関してはお互い「ガン無視」である。

「このゲームがおもしろい」など、お互い何かを勧めたり、勧められたりということはあるが「ほーん」と言ったきり、実際試すことはほぼないし、夫が私が勧めるものを試しているところも見たことがない。

ただ、相手が勧めるものに「自分はそんなの興味ない」と否定したり「俺様の好きなものは相手も好きになるべき」と強要するよりは「ほーん」と「興味持ってる風」のまま全て終わらせてしまう方がましなのかもしれない。

そんなわけで今回のテーマは「夫婦で見るおすすめのyoutuber」である。