熟年離婚をする人のガッツ
しかし、離婚には、離婚を決意する元気もいるが、実際に離婚する元気もいる。
よく、離婚は結婚の3倍パワーがかかると言われているので、心情はともかく「面倒だからしない」という人も多いのではないだろうか。
そして私も典型的「面倒だから離婚しない」に陥りそうなタイプである。
各種手続きをしたり、引っ越したり、周囲に離婚を伝えたり、などを考えたら、怒りや悲しみなど遥かに凌駕した「面倒くさい」という感情で、再び1歩も動けなくなる。
それを考えると「熟年離婚」をする人のガッツはスゴい。
逆に言えば、何が何でも別れたいという確固たる意志を感じる、文字通り「死んでもこいつと同じ墓には入らん」という執念だ。
だが、一時の面倒臭さを嫌がったせいで、それよりも膨大な時間を無駄にするというのは良くあることである。
愛情のないゲス不倫野郎と結婚生活を続けるというのは、壊れたグランドピアノが部屋にあるようなものである。
それがあることで当然部屋が狭くなるし、見る度に「何とかせねば」と憂鬱な気分になる、つまりQOLが著しく下がり、さらにそれを死ぬまで続く恐れもあるのだ。
熟年離婚をする人にガッツがあるのは、高齢になり「もう一刻の猶予もねえ」という背水の陣的パワーがあるせいかもしれない。
また若ければ、単純に元気もあるし、まだまだやり直す時間もあるので離婚の決断は早いだろう。
私のような中年世代が一番離婚に対するケツが重いのかもしれない。
ただ、心情で離婚するしないを選べるのはまだ良い方である。
気持ち的には離婚したいが、経済的になど他の理由で踏み切れないという方がなお辛い。
自立することが如何に大事かという話だが、それが難しいという場合もある。
だが、子持ちで職がなくても、福祉や行政に頼れば、DV野郎などと一緒に住むよりはマシな生活ができるはずである。
よって、もし友人などに、パートナーが不倫しているという相談を持ち掛けられても、心情的なことは本人が決めることなので、知識方面の助言をしてあげた方が良いかも知れない。
結局、相手に不倫されたらどうするかは、その時になってみないとわからない。
うちの夫に限ってと言いたいところだが、今後運命の相手に出会ってしまうという可能性は、夫にも私にもある。
だが、そういう時こそ「面倒臭い精神」を発動させるべきである。
そもそも不倫自体が面倒臭い行為であり、それがさらに離婚と言う面倒な事態を引き起こす可能性があるのだ。
「洗濯もの干すのが面倒くさい」と感じられる程度に面倒くさがりなら、不倫など絶対しない方が良いのである。
Text/カレー沢薫
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