不倫は他人事だと純粋に怒れるが自分に起こった場合「配偶者が不倫をしていたら」

カレー沢薫のカレーなる夫婦生活連載バナー

今回のテーマは「配偶者が不倫をしていたら」である。

これは、もし宝くじが当たったら、無人島に1つ持っていくなら、ウンコ味のカレーとカレー味のウンコどっちを食うか、に並ぶ良くある質問である。

しかし、宝くじや無人島に比べ、相手の不倫というのはウンコカレーの次に現実味のある話である。

最近、どこ見てもまず「杏の夫」と書かれていた、アイデンティティ不在な人の不倫が大きく叩かれていた。
私は1秒たりとも他人の不倫で怒りたくないので、そのニュースを見ないようにしていたのだが、ツイッターのTLに流れてくる情報だけでも30分ぐらい怒れてしまった。

不倫は他人のことでも腹立たしいものである。
しかし、逆に言えば、他人事だから、そこまで純粋に怒れるとも言える。
おそらく不倫報道の詳細を見た私をはじめ、多くの人が「自分だったら別居などせず、即離婚するね」と、杏の3倍はある顔面積で言ったと思う。

しかし、いざ自分が杏の立場になったら悩むだろうし、顔とスタイルが杏じゃないならなおさら悩むだろう。
相手が不倫したら、まず証拠を揃え、双方から慰謝料をむしるのはもちろん、職場にも凸して社会的に抹殺した後、これから他人になる義両親に不倫の証拠写真をお見せして「ドンマイ!」と肩を叩いてあげる最後の親孝行も忘れてはならない。

このように、昔の不倫サレ妻、夫まとめサイトで培った知識で、相手を血祭に上げるシュミレーションをするのは容易い。
相手の不倫が発覚した時の感情が、濃縮還元怒汁100%なら、これらのミッションを、娘を誘拐されたリーアム・ニーソンの如く完遂できるかもしれない。

しかし、そこに少しでも悲しみや戸惑いがあると任務は途端にインポッシブルみを帯びてくる。
怒りが大きな原動力であることは、怒っているツイッター民の皆さまの行動力を見れば一目瞭然だ。
だが、深く悲しみ傷ついている時は、そこから1歩も動けないということもザラである、とても一眼レフを持ってラブホ前にハロ―張りネズミする元気はない。

よって、現時点で夫の不倫が発覚したら、すぐに離婚だの許すだのという判断は出来ないと思う、まずは自分の回復が先だ。
その猶予として「別居」という選択を取るのも良く分かる。
時間がたって「オラ、ムカムカしてきたぞ!」となったら離婚するかもしれない。

やはり、不倫というのは、相手に愛情があるほど傷つく、
逆に、愛がなければ発覚した時点で怒りしかないだろうし、むしろ有利な条件で離婚できるボーナスステージ到来!という喜びすら湧いてくるかもしれない。

よって、猛者になると有利に離婚するために、わざと相手が不倫するように泳がせたりもするらしい。