お礼の他にはあいさつも大事にしている。
起きたときには「おはよう」夫が帰って来たときには「ただいま」と「おかえり」だ。
しかし、日々のあいさつの中でも最近「いってきます」と「いってらっしゃい」がクライシスを迎えている。

何故なら私が無職になったからだ。

私が出勤というものをしなくて良くなったため、私は夫の弁当と朝ごはん作りを終えると、オフトゥンに戻ってしまう。つまり二度寝だ。
そして私がオフトゥンの中にいる間に、夫は家を出るのである、その際夫は「いってきます」を一応言っているのだ。

ちなみにオフトゥン部屋は二階である、つまり一階で言われた「いってきます」を二階のオフトゥンの中にいながら聞き漏らさず、さらに一階まで聞こえるように「いってらっしゃい」を言わなければならないのである。

難易度が高い。
今まで何度か「いってきます」に気づかず、気がついたら夫がもう出勤していた、ということがあった。
つまりあいさつをシカトしたということである。

AV男優のカリスマ加藤鷹さんの言葉に「コンドームをつけない男はあいさつできないのと同じですよ」というのがある。
けだし明言である。どれだけ高橋名人ばりに潮を百連射できてもゴムがつけられないなら無意味だ。

そして逆に言えば「あいさつをしないのはコンドームつけない奴と同じ」ということだ。
私は夫に対しコンドームをつけない妻になっているのだ。

例えがハチャメチャになってしまったが、ともかく「すごく良い事ではない」ということだ。

よって私は毎朝、オフトゥンの中で「行ってきます」を聞き漏らさぬよう神経をとがらせている。

そんなことをせずとも、夫が出勤するまでオフトゥンに戻らなければ良いのではと思うかもしれないが、こいつが魅力的すぎて離れられないのだ。

つまり今、夫とオフトゥンという愛人との板挟みで非常に苦しい状態なのである。

何が言いたいかと言うと「不倫は良くない」ということだ。

Text／カレー沢薫

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