お前の地雷なんか知るか

その後、店につき、割高の肉を食べながら沈黙の箸休めに内容のない話をする、というようなことを繰り返していたのだが、ついに夫が、はっきりと言った。

「明日、関門海峡花火に行こう」と。

「なにゆえ?」
まず初めに思ったのが、これだ。
良いとか悪いとか以前に、ただただ不可思議であった。なにゆえ私にそのような提案をするのか、と。
何度も書くが、私は「自室神推し同担拒否過激派」であり「外出×自分」のカップリングは地雷だ。他にも「人ゴミ」とか「行列」とかはミュート対象ワードである。

そんな私と10年以上つきあっておいて、なにゆえ夫はそれら全てを兼ね備えた「花火大会」に私を誘うのか。何か怒ってんのか。
「おこなの?」と聞きそうになったが、そんな様子はない。どうやら「良かれと思って」言っているようだ。

結局「お前の地雷なんか、知るかボケ」なのである。
ツイッターのプロフィール欄に自分の地雷を明記している人がいる。
わざわざ嫌いなものなんて書かなくて良いのに、と思ったこともあったが、はっきりとした意思表示もせずに、いきなり「私、それ地雷なんですけど」と怒り出すヤツの方が厄介だ。
ただの「察してちゃん」であり、ちゃんと自分の意志を伝えていない以上は全部「知るかボケ」なのである。

つまり、どれだけ付き合いが長い家族だろうが「お察しください」ではダメなのだ。
花火大会に行きたくないなら事前に「当方は外出や人ゴミが苦手な上、喜怒哀楽の全てを二次元の男に使っているので、花火を見ても情緒が1ミリも動かない」と言っておかなければならなかったのだ。

私は常々、嫌いな物の話をするより、好きな物の話だけをした方が良いことがあるし身長も伸びるのでこの壺を500万で買いなさい、と言ってきたのだが、パートナーぐらいには嫌いな物も伝えておいた方が良い。

しかし、もう遅い。

花火に行こうと言われた後になって「外でたくない」「花火なんてつまんない」などと言ったら、ただ相手の提案にケチをつけているだけになってしまう。
よって、フガフガ言っている内に花火に行くことになってしまった。

だが、花火自体は全く気が進まなかったが、夫に、まだ私と一緒に花火大会なる場所へ行きたいと思う気持ちがあったこと自体には、そんなに悪い気がしなかったのも事実である。

ちなみに花火大会について、書くことは何もない、もちろん情緒が1ミリも動かなかったからだ。

次回は<夫が何も言わなかったのでなんとかなっていた「夫婦の食卓」 >です。
テーマは「夫婦の食卓」。無職になって以来、カレー沢薫先生の食生活には変化が現れたそうです。この変化に対する夫の反応は?

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