地雷を伝えておかなかったことを後悔した夫の誕生日の話

カレー沢薫のカレーなる夫婦生活連載バナー

前回までのあらすじ
無職になって初めての夫の誕生日。その前日だというのに「Fate/Grand Order」(FGO)で水着ガチャが始まってしまう。
絶体絶命の経済的大ピンチを迎えたカレー沢だったが、その持ち前の豪運で「2万出して無課金で推しを手に入れる」というミラクルを見せたのだった。

次回予告「実はもう10K投入した」

そんなわけで、メルカリに内臓を出品することなく、夫の誕生日を祝うことができた。
実をいうとプレゼントは、夫が「欲しい物が思い浮かばない」という人としてありえない精神状態だったため保留になった。
私だったら瞬時に欲しいキャラ2,3体挙げられるというのに、夫は大丈夫なのだろうか、ウツの前兆ではなかろうか。

よって、誕生会と称して、食事だけ一緒に行った。
我々はすでにアラフォーかつ、今は平成最後の夏なのだが、未だに発想が「特別な日は肉」という戦後キッズなため、記念日は大体「よい肉を食べる」ことにしている。

その日も、我々はよい肉を食べに、車を走らせていた。
こう書くと、とんでもなく陽気なバカ夫婦のようで、両方鼻毛が出ているに違いない感じがするが、我々は基本会話がないので車内は無言であり、鼻毛は私しか出ていない。

それが普通なので、別段気まずいわけではないが、信号待ちの時にふと目の前の電光掲示板に目が止まった。
そこには「明日、関門海峡花火が開催される」というようなことが書かれていた。

「明日は関門海峡花火か」
さすが鼻毛が出ているバカという感じで、書いてあることをそのまま読み上げたのだが、私としては漢字が読めることを評価してほしい。
関門海峡花火とは、こちらの地方では割と大きな花火であり、毎年相当の見物客がやってくる。
こちらとしては「拾ったものは口に入れる」の感覚で、ただ書いてあることを読んだだけである。
しかし、夫はそれを聞いた後「俺、明日休みなんだよね」と、彼女と初スケベに及びたい男子高校生みたいなことを言い始めたのだ。

何か、嫌な予感がした。