たったひとつの後悔

骨をもらいすぎた。

骨壺にもレギュラー・スーパー・コンパクトとかタンポンみたいにサイズがあると思うのだが、私はうっかりレギュラーを選んでしまった。打合せの際、ポンコツの弟のせいで寝不足だったからだろう。

もらう骨の量を選べるかどうかは、火葬場(各自治体)のルールによるらしい。ちなみに残りの骨の処理は「火葬場により多様だが、場内の慰霊墳墓や公営墓地で合葬される例が多い」とのこと。

神戸住みの義母が「うちの父親の時は喉仏だけもらってお墓に入れたわ」と話していたので、私も喉仏コースを選べたのだと思う。そうしておけば、ポイッと散骨できたのに…と大変悔やんだ次第である。

父の遺書には「骨は海に撒いてください」と書いていた。クレリさんに聞いたところ「法的には、節度をもって海に撒くのであればOK」とのこと。ちなみにそのへんの地面に埋めるのは違法である。

ググってみたら「遺骨を砕いて粉状にして、沖の方まで行って撒くならOK」みたいな感じだった。散骨業者に依頼もできるが、自分でやればタダである。

義母殿に相談したら「ほな金づちと麺棒でいっとこか」と頼もしい言葉。やはり戦中生まれはタフである。
家内制手工業で骨を粉末状にして、それをジップロックにつめて、天気のいい日に海に撒きにいこうと思う。夫は釣りが趣味なので、ふたりで船に乗って遠足気分で。

死後に散骨を希望する人は、ちゃんと書面などに残しておこう。じゃないと残された者が、金をケチって海に捨てたと思われる。

私も族長にさんざん「遺骨はどうするんだ?」と聞かれた。族長はスティール・ボール・ランばりに遺骨の行方に興味津々だった、ただのおっさんの骨なのに。そのたびに「散骨します、故人の遺志ですから!」と強調した。

昔の人は遺骨は墓に納めるべきと考えているのだろう。しかし次男の父には墓がない。

日本は昔の家制度の名残りで、先祖代々の墓は長男が継ぎ、次男以下は分家して自分の墓を建て、娘は嫁ぎ先の夫の墓に入る、というしきたりがあるらしい。
今は親や長男が承諾すれば他の家族も墓に入れるらしいが、我が一族はこのファックなルールを採用しているという。クッソくだらねえ。

そんなわけで、父が散骨希望と遺書に明記していてよかった。万一「丘の上に墓を建ててほしい」とか書いてたら「戯言は地獄の鬼にでも言え!」と激おこである。

墓を建てる費用は約200万円が相場らしい。べつに父は私に配慮したわけじゃなく、昔から「死んだら骨は神戸の海に撒いてほしい」と言っていたので本望だろう。
うちの夫は「死んだら鳥葬にしてほしい」と言っているが、それはペルーとかに行かないと無理なんじゃないか。

というわけで、毒親の送り方シリーズはこれにて完!といきたいところだが、もうちっとだけ続くんじゃ。

最終回「俺の弟がこんなにヤバいわけがない」と信じていたけど―――?!!
「毒親の送り方⑤ 弟よ、お前もか」お楽しみに☆

次回は<毒親の送り方⑤ 弟よ、お前もか>です。
身元確認から葬儀まで、これまで何とかこなしたアルテイシアさん。うんともすんとも言ってこない双子の弟に対しては「いまはまだショックを受けているのだろう」とそっとしておいたけれど……!?

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