毒親の送り方④ 葬儀には替えを散骨には遺書を

喪服を着て一人悲しんでいる様子の女性の画像 Pixabay

葬儀当日、11時半にクレリの斎場に到着。

司会進行役は、頼りになりそうな50代ぐらいのJJ(熟女)先輩だった。「わからないことがあったら何でも聞いてくださいね」と微笑まれて「ママー!!」とオギャりそうになる。
早速「焼香がよくわかりません!」とハキハキ質問すると「まず遺影に一礼してから合掌します。抹香を指でつまんで目の高さにあげて…」と教えてくれた。

葬儀の出席者は、私・夫・義母・伯父・伯母・Kさん・Kさんの会社の事務員さんの7人だった。事務員さんも月イチで父と食事をしていたらしい。葬儀の間、親族じゃなくこの2人がずっと泣いていた。

いらんこと言う族の族長は案の定「なんで弟は来ないんだ」「親の葬式に出ないなんて」「弟に甘すぎるんじゃないか」とか言うてきた。

「さあねえ」「知りませんねえ」「そうですかねえ」と最狂のさしすせそ丁寧語バージョンでかわしていると「お前がしっかりしすぎてるから」と言われて「誰かがしっかりしないとダメなんでねえ!!」とやや強火で返した。

中学時代、族長に「お前は将来、相撲取りになるんか」と言われて以来、いつかスーパー頭突きで沈めてやると思ってきたのだ。デブの恨みをナメるなよ。

しかし今スーパー頭突きをキメると葬儀の進行に支障が出るため、親族の控え室で控えることにした。
中身は子どもだが、本日の小生は喪主である。大人っぽく、しめやかに振る舞わなければならない。

葬儀は12時に始まる。直前にJJ先輩が「それでは行きましょうか」と控え室にやってきた。「ハーイ!」と元気よく立ち上がり、部屋を出ようとしたその刹那―――

!?

黒いストッキングに伝線が…!!!

「え、そんなしょうもないこと?」と言われるかもしれないが、これは重大な事件である。

黒いストッキングに伝線がいくと、メッチャ目立つ。焼香に立った時も「あ、ストッキングに伝線いってる!」と全員の目が釘付けになるし、「本人は気づいてるのかな?」と気になって、しめやかなムードが台無しだ。

しかも最後に記念撮影するので、データが残る。自分が死んだ後も「おばあちゃん、ストッキングに伝線いってる!」「そういう人でしたよ…」と子々孫々に語り継がれる。

「ストッキングに伝線が!!」とJJ先輩に訴えると「スタッフがコンビニで買ってきます」と即答されて「ママー!!」と飛びつきそうになる。「サイズはLでお願いします、Mだとまた破れるので」とことづけて、控え室で待機した。

結局、ストッキング待ちで葬儀は20分押しでスタートした。葬儀の進行に支障出まくりである。そんなわけで、葬儀には替えのストッキングを忘れずに☆