弟の反応は?

「………………」

弟の反応は三点リーダーだった。

アル「えーと、ショックを受けてる?」
弟「……うん……そうだね……」
アル「そりゃまあショックだよね」
弟「……今は……頭が真っ白で……」
アル「気持ちはわかるけど、今すぐ神戸に帰ってきてほしい、やることや決めることがいっぱいあるから。私は今から警察に遺体の確認に行くけど、その間にも葬儀の手配とか親せきへの連絡とかしなきゃいけないし」

と姉ちゃんが話している間も、弟は三点リーダーである。
相変わらずおぼろ豆腐のようなメンタルやな、私の方が大変やねんけどな、と思いながら「何時頃に着くか連絡ちょうだい」と伝えて、電話を切った。
さて、次はKさんに連絡しなければ。

「………………」

Kさんは三点リーダーからの嗚咽だった。「なんで…どうして…それだけはないと信じてたのに…」という悲痛な声を聞いていたら、初めて涙が出た。JJはもらい泣きしやすいのである。

「僕も警察署に行っていいですか?僕はまだ社長が自殺したとは信じられないです。この目で確かめたいし、お別れを言いたい」という言葉を聞いて、この世で父の死を一番悲しんでいるのはKさんだな、と思った。

父さんよ、こんなに悲しんでくれる人がいたんだねえ。やっぱり私はそこまで悲しくないわ。というか、さくっと死んでくれたことにホッとしてるわ。

このように思う私をひどい娘と非難する人もいるだろう。でも、もらってないものは返せない。
Kさんは父に何をもらったんだろう?

電話を切った後、私は「コープさんに電話しよ」とスマホのアドレス帳を開いた。食材の宅配を頼むのではなく、葬式の手配を頼むのである。
というのも去年、義母に終活ブームがやってきて「コープのお葬式 クレリ」に会員登録していたのだ。

義母、グッジョブである。葬式饅頭をもらったから言うわけじゃないが、結果的にクレリに頼んでよかった。お手頃価格・親切丁寧なサービスでコスパ最高、☆5つをあげたい。
という話をJJ会でしたら「私も親が死んだらそこにする!担当者、紹介して」と皆が食いついていた。美容院のように葬儀屋を紹介する、思えば遠くへ来たものよ。

母が死んだ時に知ったのだが、神戸市では死体が発見されると(つまり病院で死んでない場合)、すべて大学病院内にある監察医務室で死体解剖される。そこで死体検案料(15000円)と検案書発行手数料(5000円)をキャッシュで払わなくてはならない。「高いので結構です」と断ることは多分できない。

人が死ぬと何かと金がかかる。なので葬式は超シンプルプランでいこうと決めていた。
父の遺体は警察署から監察医務室に運ばれて解剖されて、そこへ葬儀屋さんが来てくれて、クレリの斎場に運んでくれる。その時に、葬儀の詳細について打ち合わせするという流れだ。

クレリに電話した後、しばらくして刑事さんから電話がきた。

「今、お父さんのアパートに来てます。部屋に何通かの遺書が残されてました」

残念ですがKさん、自殺確定です。
「遺書か…エモいこと書いてたらイヤやな」と重い気持ちになりつつ「3年は影武者を立てろと書いてますか?」とボケようかと思ったが、不適切なのでやめておいた。遺書は封筒に入っており、目の前で開封して確認させてほしいとのことだった。

「警察署の刑事課に来てください。その時に遺品や書類もお渡しします」と言われたので、紙袋と小さめのダンボール箱を用意した。服装は“警察にお呼ばれファッション”の正解がわからないので、白シャツ&黒スーツにした。

その後、帰宅した夫と車で警察署へ向かった。夫もたまたま白シャツ&黒スーツだったため、紙袋とダンボール箱を持つ我々は東京地検特捜部のようだった。しかし今はどちらかというと調べられる側である。

我が家は車を所有していないので、私はこの時はじめて夫の車の助手席に座った。用件は「飛び降り自殺した父の遺体の確認」だが、ほんのりデート気分も味わった。
40分ほどのドライブの後に警察署に到着、そこで予想外の事件が起こる。

―次回「毒親の送り方②警察署でまさかの出会い」、お楽しみに!

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次回は<毒親の送り方②警察署でまさかの出会い>です。
絶縁していた父が亡くなり、その原因が自殺だと告げる電話が突然かかってきた――。先週に引き続き、毒親の死について。「社長がいなければ今の僕はない」と父を語る部下の言葉に触れたアルテイシアさんは……。