ひたすら漏らさない私「家庭内でイライラした場合の解消方法」

カレー沢薫のカレーなる夫婦生活連載バナー

今回のテーマは「家庭内でイライラした場合の解消方法」である。

前に「自分の機嫌は自分で取るのが大人」という、ネットで見かけた名言を丸パクしたような話をしたと思うが、さすが他人が考えただけあって、まさに至言である。

負の感情をみだりに他人の前で漏らさず、漏れる前に自分で処理する、それが大人であり、漏らした上に他人に後片付けまでさせようとするのは、乳幼児のすることだ。

だがそれが、恋人や夫婦、パートナー関係になると「赤ちゃんプレイ」や「スカトロ」など、見せてはいけない痴態を晒したり、出しちゃいけないものを出しあったりたりすることが、コミュニケーションの一つとして正式採用されてしまっていたりするのだ。

もちろんそれはプレイ上でだけ許されることなのだが、ついつい油断して「プレイを家庭に持ち込む」ということもしばしばある。

つまり、他人の前では我慢できる苛立ちを、家族やパートナーの前ではつい出してしまうということである。 家族間特有の甘えであり、それだけ気を許しているとも言えるが、中には赤痢かよ、というぐらい常に不機嫌で、それを家庭内で漏らしまくっている大人が家にいる家庭もあると聞く。

それが家長だったりすると、配偶者や子供までもがその赤痢患者の感情の世話に追われることになってしまう、そういう家は常にピリピリしており、子どもはビクビクしているという。 いくら家庭がくつろぎの場と言っても、あまりのびのびとイライラするのは良くないのである。

カレー沢家の家庭内イライラの解消法

我が家の家庭内イライラの解消法だが、夫はあまりイライラしない方、もしくはイライラしていても表に出さない方である。 だが、これは私が、夫が左利きであることにさえ1年気づかなかった、他人の機微に情弱極まれりなので、夫のイライラにただ気づいてない、という可能性もある。 私にイライラを伝えたいなら、貧乏ゆすりでマグニチュード12ぐらいは叩きだしてほしい。

ただ、特に理由のない夫のイライラが私を襲うことはないが、私の便所の使い方が汚かったりと、理由しかないイライラが夫の心を襲うことはよくある。

これはもはや「イライラ」などではなく「正当な怒り」なのだが、それで夫に怒られた時、何も意識していなければ、私の第一声は「ウンコ中、敵襲を受けた、戦場ではよくあること」という「言い訳」がまず出て来てしまうのだ。

とりあえず、それを我慢する。 申し開きの余地がある時は言うが、ない場合は、5億個ある言い訳を食道あたりで止めて、まず一言「ごめんなさい」と謝り、以後気をつけますと今後の展望を語る。

その後は黙る、気を抜くと5億個の言い訳が出てくるし、それら全部が言い逃れと責任転嫁であり、夫をさらに苛立たせるとわかっているので、自分からはもう何も言わない。

夫も怒りが長続きしない方なので、ちゃんと謝って、あとは時間が経てばもう怒っていないのだ。

実際「放っておく」というのは、家庭内のイライラ管理において、かなり有用らしい。

パートナーが不機嫌な時、何が原因かもわからぬうちから、こいつは自分にムカついている、私は何もしてないのにこいつはいつもこうだ、チクショウ誰も私を愛さない、と被害妄想を炸裂させ「私の何が悪いの!?」と相手が何も言わぬうちから「先制機嫌取り」という名の攻撃をしかけるのは逆効果なのだという。

心当たりがないのに、パートナーがイライラしている時は「自分には関係ないこと」と思い、まず放置が一番なのだとそうだ。 苛立ちの原因が自分だったとしても、それを言語化して伝えない相手が悪いのだ。