『あたし おかあさんだから』 はどうすべきだったか

 作詞をされたのぶみさんによると、『あたしおかあさんだから』は、子育てにおいて我慢をしていた実例をお母さん達から募集してできた歌だそうだ。

 さらに、ママおつかれさまの応援歌だと説明している。

 しかし、大きく空回りしてしまった。

 それは、「私がなんで怒っているかわかる?」ですれ違う男女のように、重視する点が多くのお母さん達とすれ違ってしまったからなのだ。

 『闘え!サラリーマン』と同じような構造で、心情ではなく行動を肯定してしまったからなのだ。

 結果的に、曲から子育ての喜びや辛さがすっぽり抜けてしまった。

 ひたすら子供のためだけに我慢する母親像が描かれたことで、苦労をおしつけているように感じた人が多かったのだろうと思う。

 しかし私は、のぶみさんの、お母さんたちをねぎらいたいと言う気持ちは嘘だとは思わない。

 実例はそこそこに、もう少し「大変だよね」「でも子育ては辛いだけじゃないよね」という心情に寄り添った描写があったなら、ママ達を応援したいという気持ちが伝わっただろうと思うのだ。

 伝え方って大切

 『あたしおかあさんだから』は、

どんなに前向きな気持ちも、伝え方次第ではネガティブな捉えられ方をしてしまうことがあるという例だったと思う。

 だが逆に言えば、相手が重要視している点を踏まえて話せれば、無用な争いを避けることが可能だと教えてくれた出来事でもあった。

 夫婦喧嘩やすれ違いが起きた時に、思い出してもらえたら嬉しい。

 ちなみにゴリラは、1000円事件で私がプンプンした理由を聞くと笑って、

 「そっか、バッって取られるの嫌だったね」

と言うと私を抱きしめ、バッとお金や物を取ることはしなくなった。

 だが今思えば、私達の茶番を近くで見なくてはならなかったレジのお姉さんの気持ちを考えていなかった点は反省しなければならないだろうと思う…。

※2018年3月15日に「TOFUFU」で掲載しました

Text/元鈴木さん