玄関の3枚の写真はなぜ現存しているか

では玄関の3枚の写真がなぜ現存しているかというと、この3枚にはある共通点がある。

3枚とも「観光施設側が撮影かつ販売している記念写真」なのだ。

ああいった施設内で販売される記念撮影というのは、ホテル内の自販機や新幹線内のチップスターと同じく割高であることが多い。

誰もがスマホで高画質な写真がとれる時代である、ツーショット写真が欲しいなら係員に己のスマホを渡して撮影してもらい、家でプリントすればよいのだ。
さすがにそれだけで料金を取るB(ぼったくり)パークは日本ではなかなか存在しない。

私もそういう考えなので、あの記念撮影を買うという発想はなかったのだが、夫は「買う人」なのである。

「変わっているな」と思ったが、残っている写真の3枚中3枚そうやって購入したものなので、その判断は正しかったといえる。
ああいった記念撮影はプリントだけではなく、そのまま飾れるような簡易額装をしてくれる場合も多いので、私のような人間でも「玄関に写真を飾る」という高度なことができてしまうのだ。

家事ができない人間が七転八倒と家全焼を繰り返しながら家事をするより、外注した方が却ってコスパが良いように、あの割高記念撮影もデータ管理ができない人間にとってはむしろ安いぐらいなのだ。

今の世の中探せばトイレ以外何でも代行してくれる業者がいるものだ。
できないことを頑張って自分でやるのも大事だが「思い切ってプロに任す」のも同じぐらい重要だ。

今は平気だが、写真ももっと残しておけばよかったと後悔する日が来るかもしれない。
私も今後は己のツラが印刷された紙に対しては積極的に金をだしていこうと思う。

Text/カレー沢薫