素直に舎弟になってくれるケースは…

ママ友グループは子供でつながっている仲なので、自ずと子どもや夫など家族ネタのマウントが主流になっているのではないかと思われる。

何せ自分はそのコミュニティに入るところまでいけていないので、本当にそんなマウントが起こっているのかは不明だが「うちの子は英語が流暢ザマス」と言われたら、つい「うちの子は呼吸が堪能」と対抗してしまうかもしれない。

しかし、マウントを取ったところで周囲が「そこに痺れる憧れる!」と素直に舎弟になってくれるケースなど自分がDIO様でなければ稀である。

マウントを取って相手が「死」を意識するまでボコ殴り、永遠の忠誠を誓わせるまでできるというなら良いが、旦那や子ども自慢など中途半端なマウントでは、単に周囲のヘイトを集め「機会があればひっくり返してやろう」と思われるだけなのではないか。

元々マウンティングというのは猿などが行う行為だが、ボス猿になるということは、ボス猿の座を狙う連中に狙われるということであり、平穏に暮らしたいならやるべきではない。

能ある鷹は爪を隠す、本当に怖い人ほど敬語、真の変態ほど紳士、というように本当に夫が有能で子供が可愛ければ、わざわざ他人に「うちの家族最高じゃね?」と確認する必要もないのである。

だからといって「うちの旦那は本当に甲斐性がないし、子供はバカでブスで呼吸音すらうるせえ」などと、家族の悪口をいうぐらいならまだ自慢話の方がマシである。

「謙遜」するのは良いが手前の謙遜に家族といえど他人を使うのは間違っている。

家族を使って謙遜したいなら、あんな甲斐性も頭髪もない男を一生のパートナーに選んだ愚か者のツラを皆様にお見せして申し訳ないと頭を下げるか「子供がバカでブスで鼻息が荒い敗因は全てこの私」と田岡茂一の顔をするなど、あくまで自分自身を下げるべきだが、それもあまり誉められたことでもない。

つまり家族の話というのは、自慢すればムカつかれ、悪口を言えば優越感を抱かれるだけであり、詳しく話して得することなどほとんどない。

家族の話は聞き手に徹し、聞かれたら「いる」ぐらいの返答で十分なのではないか。

Text/カレー沢薫