「どこかはわからないけど、君のこと好きだよ」

「私のどこが好き?」という、面倒くさい質問を好きな人にしてしまうことがある。顔やら性格やらの良いところを探して伝えてくれる人には優しさを感じるが、でも私が言われて一番うれしいのは「うーん、どこかはわからないけど、君のこと好きだよ」である。相手のことをわからないまま好きになるのと同じように、自分のこともわからないまま好きになってもらえたらうれしい。「私のことを理解してほしい」という欲求はさほどわかないのだ。

たとえば「家庭的なところが好きだよ」と言われたら「私の仕事が忙しくなって家事ができなくなったら別れるってこと!?」と思ってしまうし、「頭のかたちが綺麗なところが好きだよ」と言われたら「事故にあって変形したら終わりなの??」と思ってしまうが、「わからないけど好き」なら、安心だ。家事をしなくなっても頭が変形しても、そのまま好きでいてくれるかもしれないと思える。まぁ実際には意味のわからない理由で別れたりするのだけれど、恋というのはそういうものだから、仕方ない。

お互いわかりあえなければ恋ができないなんて、そんなことはたぶんなくて、むしろ、わかりあえないからこそ恋ができるのだと思う。よくわからないけど胸がキュンとしたり、どうしてもキスがしたいと思ったり、そういう感覚をたいせつに、このまま恋に狂っていたい。

Text/雨あがりの少女