「書かれていることを知らない男」の作り方
というわけで、“書かれたくない男”のことを無理やり書くのは、言ってみれば暴力だし、“書かれたい男”のことを書いたところで、本当に自分が書きたいことは書けない。ではどうすればいいのかというと、それは“書いたものを読まない男”を見つけるか、もしくは“書かれていることを知らない男”にしてしまうのです。
“書いたものを読まない男”については、そういう性格の人とたまたま巡り合えるかどうかなので、運としか言いようがありませんが、後者は自分で作り出すことができます。具体的にはあなたが書いた文章を発表する場合にはペンネームとし、さらにそこに登場する人物の職業や年齢、時代背景などはまるっと変える。
万が一、「これ、俺のことで、実はお前が書いてるんじゃないの?」とバレそうになったときに、「え、違うよ。わたし書いてないし、書かれてることだって、あなたと全然違うじゃない!」としらばっくれれば、それ以上、追及しようもない。「友達の友達の話」というのは実は「友達の話」で「友達の話」というのは本当のところ「わたしの話」というわけなのです。
Text/大泉りか
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