記念日のディナーは彼に予約してほしい?エスコートを誰がするか

あるときスマホに、女友達からの怒りに満ち溢れたこんなメッセージが届きました。

「ふたりが付き合った記念日だっていうのに、恋人がディナーの店を予約してくれない。たまにはお前が予約してくれてもいいじゃんっていうんだけど!」

今どき店の予約くらい、ネット上で簡単にできるし、ネット予約に対応していない店であっても、電話一本掛ければ済むこと。さっさと自分で済ませればいいのに……と心の中で思いながらも、「じゃあ、代わりにわたしが予約しようか。どこのお店(笑)?」と返したところ「店はまだ決まってないの。っていうか、決めてくれない!」と怒っている。

なるほど、“予約をしてくれない”というのは単純に店に予約を入れることではなく、“記念日に相応しい店をリサーチして予約する”という“エスコート”を指していたのか。そして、その“エスコート”を今回、恋人が放棄したことが、彼女の怒りの根源らしい。

エスコートを拒む彼の気持ち

彼女からすると、恋人は「釣った魚に餌はやらない」を行動で示してきたわけで、それに不満を抱くのはもっともです。恋愛を上手くいかせるためのモテ技として……彼女がそれを望んでいたから……なんとなくそういうものだと思って……これまで彼が“エスコートする方”を遂行していたその理由は、推測するしかありませんが、彼のほうだって、たまには彼女に“エスコートされる方”を望んでもまったくおかしくありません。

彼が失敗した点といえば、そういう自分の気持ちを彼女に伝えることなく一方的に、これまで自分が担当していた作業――記念日ディナーの店のブッキング――を振ったことでしょう。イヤイヤ期じゃないんだから「予約イヤイヤ」するのではなく、「今回は、君のセレクトのお店を予約してほしい」といえば、彼女側もここまで怒り心頭になることはかったかもしれません。

現に彼女とわたしとで食事に行くときは、「こことかどうかな?」とずらりと店の候補を送ってきてくれる。だから、店を調べて予約をすることが、できないというわけでは決してない。

エスコートされたい彼女とエスコートから降りたい彼

……しかし、はたして彼女はそれで納得するのか。彼女には“女性”として“男性”である彼にエスコートされたいという気持ちもある。彼女が“エスコート”されることにこだわるのは、それが“女性扱い”される喜びを感じられるから。だとすれば、外野が「二人の記念日なんだから、自分で予約しちゃえばいいじゃん」といったところで意味がないし、さらに彼の「今回は君で」という願いだって跳ねのける可能性もある。これまで通りにエスコートされたい彼女と、エスコートから降りたい彼、どちらが我を通すのか。

その展開を知りたくて数日後、「ディナーは上手くいった?」と何気なく伺ってみたところ、「うん、めちゃくちゃ文句を言ったら予約してくれた」ということで、彼女の意向が叶ったようで何よりです。人生やっぱり強く主張をしたもの勝ちかもしれません。

Text/大泉りか