立場を振りかざすクソな大人の犠牲にならないで

あなたからの質問は3つにそって、今回は最初に結論からお話しさせていただきます。

1つ目、「店長が抱きしめてキスしてきたのはどういう意味があったのか?」
あなたに対して「あわよくば……」という決してよくない感情を抱いているから。
2つ目、「店長との今の関係は見直すべきか?」
当然、見直すべきです。
3つ目、「今後、そういう風に会うのはやめるべきか?」
もちろん、やめるべきです。

この連載『命に過ぎたる愛なし』中で、わたしは基本的に「こうする“べき”だ」という決定的な言い方はしていません。
客観的立場から考えられる選択肢を提示し、あくまでも「わたしがあなたの立場だったらこうするけれど」という表現に留め、どうするかは相談者の方に委ねています。
しかし、今回の相談では「あなたが決めることですよ」とはどうしても言い兼ねるため、はっきりと結論を言わせていただきました。
その理由について、これからお話しさせていただきます。

現在あなたは、18歳ですよね。
18歳って、すごく曖昧な年齢だと思うんですよ。
選挙権を持つようになり、車の免許は取れ、結婚もできますが、2020年現在で法律上は未成年です。
精神的にも、肉体的にも子供から大人へと成長するグラデーションの真っ只中ということもあり(もちろん個々の濃淡はありますが)、自分自身の評価と周りの大人たちからの評価に乖離がある、とても難しい時期なのではないでしょうか。
わたしが18歳のときは、すでにいろんなことを自分なりに一生懸命考えていましたし、「18歳なんてもう大人じゃん、一人前でしょ」なんて思ってました。

今年、わたしは30歳になります。
この歳になって、18歳だった自分を客観的に見ると、「いや!ちょっと危ういよ?!もっと気を付けて!大人の言うことに耳を傾けて!」と思わず言いたくなってしまうのです。
決して、あなたのことを“なにもわかっていない子供”として扱っているわけではありませんからね。
あなたはあなたなりに、きちんと考えて行動しているということは、十分わかっています。
でも、学生なのか、社会に出て働いたことがあるのかという差だったり、年齢に比例した経験の差だったりというのはどうしてもあります。そして、あなたよりその店長に年齢が近い同世代として彼の行いを客観的に見ても、どんなに好意的に捉えたとしても、「明らかにおかしい」とはっきり言い切れます。
まともな人間であれば、彼があなたにしたような言動は、絶対にしません。

少し前から、セクハラやパワハラなどの問題が注目されるようになってきました。
まだまだ明るみに出ていない事実や今も苦しんでいる人たちがいることに、わたしたちはこれからも向き合っていかなくてはいけませんし、根本的な解決は決して容易なことではないと認識して闘わなくてはいけない問題です。
それでも、社会の風潮や個人の意識は少しずつ変化していっているように思います。
そういった社会や周囲の変化に伴い、自分の価値観をアップデートしているまともな上の立場の人は、気遣いと配慮を持って、下の立場の人に接するものです。
彼のように、上司と部下、雇い主とバイトという関係性の垣根を越えて、18歳のバイトの子と2人きりでお茶をしたり、海を見に行ったりなんてことはしないんですよ。
また、もしほんとうに同じ店で働く仲間として仲良くなりたいと思っていたとしても、彼のように誤解を与え兼ねないやり方はしませんし、どんなに仲の良い関係になったとしても、一線は引くものです。

18歳でバイトのあなたは、自分より14歳も年上の大人に、そして上司とされる立場の人に言われたら、たとえ嫌でも断れなかったり、「そういうものなのかな?これは普通なのかな?」と受け入れてしまったりするのも無理はないでしょう。だから、下心がある人に対して「やさしい人なのかな?」と前向きな印象を抱いたり、好意を持って接してくる人に対して「年上の友達ができた!」とうれしくなったり、といったこともあるかもしれません。
でもそれは、あなたの捉え方が間違っているというわけではないので、どうか自分を責めるようなことはしないでくださいね。
本来であれば、年齢や立場が上の人間は、きちんとした道理を持って、立場や年齢が下の人間に接するべきなんです。
自分に比べて14歳も年下で、立場の弱い若いあなたを言いくるめようとしょうもない経験値を振りかざしている彼は、クソほどずるくて気持ちの悪い存在だとわたしは思います。