賛否両論! ラストでふたりはなぜ別れてしまったのか           

By Jinx! By Jinx!

 もうひとつ、本作には重要な問題が描かれています。
それは、「男女の対等な恋愛関係は、本当に成立するのか?」ということです。

 南原の研究者としての有能な腕に惹かれ、彼に認められたくて研究にのめり込んでいく仁子。
やがて、再び南原への正直な気持ちに気付いた彼女は、ついに彼からのプロポーズを受け入れます。
しかし、研究者として成長していた仁子と南原との間には、思わぬ問題が立ちふさがることになります。

 最終話、研究のためオーストラリアへ行くことになった南原は、自分についてくるよう仁子に命じます。

「じゃあ来てくれ。でも後悔するなよ。
俺は、お前に一生安定した生活を約束する。
 きれいな家に住み、何からも、どんな災害からもお前を守る。
だから、俺の子を産み、その子を共に育てて、いつも俺のそばで笑っていてくれ」

 しかし彼には、仁子がそんなことを言っておとなしくついてくるような女ではないこともわかっていました。
わかっていて、あえて突き放すようなことを言ったのです。

 なぜなら、彼の心の中にはいつしか「仁子の成長はうれしいが、俺を超えることなくいて欲しい」という気持ちが芽生えてしまっていたからです。
このままでは、彼女のためにならない。そう思った彼は、仁子に本音を伝えます。

「これ以上一緒にいたら、俺はお前の夢をつぶしたくなる! お前が俺から飛び立てないように」

 そして、南原に半ば背中を押される形で、ふたりは泣く泣く別れるのです。
どんな困難や障壁があっても、なんだかんだ最後は丸く収まるのが定番だった月9ドラマで、このラストはまさに異例です。

 なぜ、ふたりは別れなければならなかったのか。
それは、別れ際に仁子が言った、「戻りたい。昔の、教授が好きだっただけの自分に」というセリフが象徴しています。

 かつての仁子は、凄腕の研究者である南原を一方的に尊敬し、追いかけていました。
付き合う男性としては欠点だらけでも、そこに「南原>仁子」という上下関係/主従関係があったからこそ、ふたりの恋愛は成り立っていたのです。

 もし、昔のままの仁子なら、南原のプロポーズを受け入れ、ともにオーストラリアへ旅立っていたでしょう。
ところが、研究者としての成長を果たし、南原と「対等」になってしまった仁子には、一方的に献身したり、なにかを犠牲にするような「恋愛」は、もはやできないのです。