恋愛には数式も方程式も存在しない
色彩豊かなインテリアやファッション、そしてポップな音楽が全編散りばめられています。
アスペルガー症候群とは特定の分野においては凄まじい集中力と興味を持ち、人と接する場面では相手の感情を読み取れず、よく言われる“コミュ障”とは比べ物にならないほどコミュニケーションを苦手とする発達障害。
いわゆる天才肌の人に多く、シモンもその例外ではない。
シモンは数字に極端なこだわりを持ち、遅刻は絶対にしない。求められると正確な数字で答えられる才人だけど、正確な数式も方程式も存在しない人の気持ちを上手に汲み取れない。特に恋愛においては……。
サムの恋人探しの場面で、シモンはあらゆる女性に質問だけを投げかける。該当すれば可能性アリ、該当しなければナシ。感情なんて一切触れない。
恋愛の過程を完全無視した恋人探しが斬新で、そもそも恋愛って一体何なのか。
データだけで決められない、なんて難しい行為なんだと改めて思いしらされてしまいます。
シモンが初めて“恋”に触れる時……
これは“恋愛の初期衝動”を描いているのかもしれない。
そもそも、恋愛の仕方なんて家でも学校でも教わらない。自然に惹かれ合い、繋がっていく…その“自然”な過程がシモンには全くなく、すべてが原因と結果でこの世が成り立っていると思っている。
言ってしまえば彼は頭のいい子ども。嘘をつくことなく、そして恋愛の感情を持つことのない彼が、“恋愛”に触れると人はどうなるか?を目の当たりにする。
初めて恋というものに触れたシモンに、宇宙以外の新たな世界、そして次第に芽生えていく感情という方程式がみるみる映像の中に広がっていくのです。
サムの元恋人の家を尋ね、「どうして別れたのか?」と機械的に質問する様が微笑ましい。
実際にこんな事されるとキツいけど、まるでデータ収集のように別れた理由を尋ねられると、逆に「どうして別れたんだろう?」って自ら問い出してしまいそう。それほど恋愛感情ってめんどくさいものなのでしょう。
シモンの純粋さは一緒にいると疲れそうですが、癒される場面も多くあるのです。