この世に“上手い別れ方”なんて存在しない?
始まった途端、互いの愚痴で始まる恋愛映画って珍しいです。
でも、現実世界では当たり前。相手がいない場所で互いの悪い面をたくさん掘り下げて、家に帰って一人になると遠い目をする。もしくは泣く。さらにはLINEのデータを削除。Facebookで相手の近況を覗き見する。それはドンヒとヨンも同じ。
でも、この二人はある意味現実では“叶わない夢”を叶えている。ドンヒがヨンのSNSのパスワードを探り当ててログインしたり、ヨンがドンヒの今カノを尾行したり、普通やってはいけないことを次々と実行する。
こんなに感情を露にして、互いに不満をぶつけ合う失恋はなかなかありません。だけど、再びヨリを戻した後の二人が向かう先は果たして“叶わない夢”なのでしょうか。
その結末は、あまりにも現実的で厳しいもの。
「これが“別れ”ですか? 愛し合ってた頃は美しいのに、その結末はあまりにも醜い」
ドンヒのセリフにあるように、愛が憎しみに変わる描写があまりにも生々しく、笑いながらもハッとさせられるシーンが多いのです。
“上手くいくカップル3%”の狭き門へ
ドンヒとヨンが勤める銀行にドキュメンタリーのカメラが入り、インタビュー形式で登場人物たちの独白するシーンを物語の途中に散りばめている。これにより、リアルタイムで二人の感情が言葉に変換されていくのでとても分かりやすい。
再び付き合う事になった二人は、統計として立ちはだかる「再びヨリを戻したカップルで上手くいくのは3%」を乗り越えようとする。その障害となるのが、ずっと変わろうとしないドンヒ、いつも自分だけが頑張ってることをアピールするヨンだったりする。
この愛を大切に、壊さないようにしたい。
二人の気持ちは一緒なのに、考えれば考えるほど亀裂が生まれていく描写がとてつもなくリアル。冒頭から恋愛が終わり、また恋愛が始まり、そして……。
こんな風に、ある意味3度恋愛映画が楽しめるのは映画の中だけにしてほしい。現実でこんなに気持ちの上昇&下降が繰り返されると苦しいですから。
高まるだけじゃなく、ちゃんと冷める。そんな“恋愛の温度”を時に冷たく、時に温かい恋をしたことがあるすべての人の心を包み込んでくれるのです。