ジュルズのアゲマンっぷりが世界中に感動を与える

 一言でいうとアゲマンのお話なのです。
どこをどう切り取っても、ジュルズがいなければこの映画は感動作にならない。映画にすらならない。ボールは一生自分に自信が持てないまま、歌の才能を信じることもなく、オーディション番組にも応募しない。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと デヴィッド・フランケル ジェームズ・コーデン ポール・ポッツ ギャガ ONE CHANCE アゲマン 人生 歌声 挫折 ジュルズ 愛 オーディション 2013 ONE CHANCE, LLC. All Rights Reserved.

 才能だけが存在しても意味がない。それを支える人、見つける人、伝える人の重要性がはっきりと描かれている。それに次々と襲いかかる困難が多ければ多いほど、周りの人は彼の信念に気付き、応援し始める。

 観ているといつの間にかポールの夢を応援してしまう。観る人の目にうつるポールの姿は、自分自身への応援に重なるのかもしれません。美化でも美談でもなく、何事も自分を信じてやり抜けば夢に近づくことができるのかもしれない。
ただ、ポールを演じるジェームズ・コーデンは本人よりイケメンなので、ちょっと美化されています。それも愛嬌という事で……。

その歌声には喜びも悲しみも全部詰まっている

 事あるごとに「何事も一歩よ」というジュルズのアドバイスがポールの心に触れる。そのたびにポールが町の片隅から、またはある難しい境地から、一歩ずつ前進していく。
この頼もしさが無ければポールの夢は実現しなかった。彼にとっていかに恋人、やがて妻になる彼女の存在が大きいか。ジュルズがこの奇跡のストーリーの大部分を担っている。

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 だからこそ、ポールの歌声には喜びも苦しみも全部が詰まっている。それは、観る人の過去から現在までも一気に遡る。その歌を“才能”の一言で表すのは勿体ない。
生活、仕事、そして何よりも恋人の存在まですべてが歌声に乗る。それが観客、審査員、視聴者に届き、その後YouTubeで世界中に広がり、映画になった。

 その事実に心が突き動かされる。今、何一つ花開かない人にとって、この映画はポールにとってのジュルズのように頼もしい存在なのです。
ポールの喉元に突っかかっていた希望が口から飛び出し、スクリーンを突き抜けてくる。その瞬間、観る人にもとめどない希望が降り掛かる光景が目に浮かびます。