人生はその気になれば何でもできる。ナンパ男とホテルに行くことだって

若い頃、繁華街を歩くといつも、水商売や風俗のスカウトだとか、キャッチのホストだとか、あとはナンパ目的の男性が、時には10メートルごとくらいの勢いで話しかけてくるのが、大変にタルかった。なので、歌舞伎町の入り口に差し掛かるあたりで携帯電話を耳に当て、「えー、マジで? ウッソ!」などと大声をあげて、誰かと電話しているふりをしながら目的地に向かうという防御法を採用していたりもしたけれど、いつの頃からかすっかり誰かが話しかけてくることもなくなり、最近は大変に歩きやすい。それは喜ばしいことである一方、わたしの性的資質はすっかり減少してしまったのだなと、少し寂しい気持ちになるのも実のところ確かです。

「おねーさん」と声をかける男たち

ところが先日、ゴールデン街の行きつけのバーでひとりで飲み、ボチボチ帰ろうとお会計を済ませて店を出た深夜未明のことです。その日は休前日ということもあって、てっぺんをまわっても街中はすごい人出でした。いつもならばコンビニで買った缶チューハイでパワーチャージしつつ自宅まで歩いて帰るのですが、その日はあいにく高めのヒールを履いていたので、タクシーに乗ることにした。ところが行き交う車はすべて迎車ランプがついていて、空車がまったく来ない。しかもわたし以外にも、タクシーを探している様子の人々が大勢いる。ここで待っていても先が見えないと思い、職安通りのあたりまで行こうと決意して歩き出したところで、「おねーさん、どっかで一緒に飲みません?」とサラリーマン風の男性に声を掛けられた。

通りかかる酔っ払ってる風の女全部に声を掛けているであろうことはわかっていても、一応は「声を掛けよう」と思う範疇に入れていただけてありがと! みたいな気持ちでもって、丁寧にお断りして歩き出してちょっとのところで、またも「おねーさん、もう帰っちゃうの。どっかいかない?」と再びのナンパ。なんなの今夜の歌舞伎町。そんなに人材不足なの? などと思いながらまたも丁重にお断りしてもうすぐ職安通りにたどり着くというところで三度のナンパ。しかも今度は「これから飲みません? 僕、AV男優やってるんですけど」と足を止めざるを得ない自己紹介付きで。