元彼の幸せを素直に応援できない
毎日のように高級ホテルに泊まるなんて贅沢すぎる。全部経費って。料理もタダって。それが仕事って。
イレーネを見て、この上ない人生を謳歌していると誰もが思う。ただ、傍に誰もいないってことだけが引っ掛かる。
次々と現れる高級ホテルに惑わされてはいけない。だからといって、独身を簡単に悲劇扱いしてはいけない。
かくも“幸せ”とは、外見で判断できないものなのでしょうか。
“幸せ”を計るために、自分と周囲の違いを物差しにしてしまうのが厄介です。
アンドレアの彼女に子どもが産まれるので、一緒に新居を探す。父親になることを拒んでいた彼が次第に責任を持ち始める姿に、なぜか心から応援できない。挙げ句の果てに、“家族”としての生き方を貫くシルヴィアと意見が合わず大げんか。
その物差しがあまりにも大きい事に気付き、イレーネは自分の生き方を見つめ直すことになるのです。
“覆面調査員”の生き方をチェックするのは?
本作の原題は『一人旅』。一人旅はいつだって自由で、優雅で、孤独。しかし、一人でいることに、イレーネの周囲では様々な意見が飛び交う。
イレーネはホテルのサービスを厳しく監視できても、自分の人生を深く見つめられていなかったのです。
「スタッフはお客様の名前をはっきりと認識し、発音できたか?」
「ルームサービスの朝食は指定した時間を5分以上超えなかったか?」
「レストランに入ってから30秒以内に案内されたか?」
これらの調査はできていても、自分の人生はそう簡単にはチェックできない。
「誰かと食事をしているか?」
「家に帰ったら、冷凍食品じゃなくてちゃんと料理をしているか?」
「元彼の幸せを素直に応援できているか?」
イレーネの生き方に星はいくつ付くのか。
高級ホテルと私生活のギャップに苦しまないよう、彼女はしっかりと自分の人生を謳歌できるか。