一人暮らしと実家暮らし。この違いは大きいかもしれません。
どちらが良いとは限らない。実家を鬱陶しく思ってしまう時もあれば、Googleマップで検索してしまうほど寂しい時もある。と、“実家”に対する気持ちはいつだって複雑。まるで恋みたいです。
恋に仕事に、忙しい毎日に追われる日々。ああ、10代の頃の夏休みのように、ダラダラとテレビ見てゲームしてマンガ読んで過ごしたい!この映画は、恋と仕事とはかけ離れた世界にいる女の子が主人公です。食べて、寝て、マンガを読み続けています。こんな女の子が羨ましい? それとも……。
『23才の夏休み』を過ごしてしまっている、タマ子の日常を覗いてみましょう。
23才ニート女子という、華やかさの欠片もない主人公・タマ子を演じるのは元・AKB48の前田敦子。
一世を風靡したアイドルが、まさか田舎でくすぶっている女の子になり切るなんてムリでしょ? いやいや、これがちゃんとだらしなくて、色気なくて、ダメダメな女の子にしか見えないのです。でも、ちゃんと可愛くて憎めないからビックリ。
このような愛らしい人物像を描くのは、さすが山下敦弘監督。これまでに『ばかのハコ船』から『天然コケッコー』まで幅広い人間模様を撮り続けていますが、本作は「停滞した日常」×「田舎の女の子」ということでちょっぴり集大成にも感じられます。
“実家依存”女子は一歩踏み出せるのか?
【簡単なあらすじ】
東京の大学を卒業したタマ子(前田敦子)は、就職もせずに父の善次(康すおん)が一人で暮らす実家に“帰省”する。しかし、これが“寄生”になっていることに善次は頭を抱える。経営するスポーツ用品店・甲府スポーツをろくに手伝うこともなく、食っては寝て、ゲームしてマンガ読んで、ダラダラと暮らす毎日。
そんなある日、タマ子は「就職活動するので、ちゃんとした服が欲しい」と善次にねだる。ようやく本気になってくれた娘に善次は喜ぶが、その真相は……。
やがて、善次の再婚話が浮上する。その相手をこっそりリサーチしに行くことで、タマ子の日常がほんの少し揺らぎ始める――。