“宇宙に一人取り残されても“サバイバル精神が強すぎる女”だったら大丈夫?『エイリアン』
最後に紹介するのは、SFホラー映画の基盤を作ったリドリー・スコット監督の不朽の名作『エイリアン』。
4作目まで一貫して、主人公のリプリーのエイリアン相手に奮闘する姿に女の強さを感じます。
ストーリー
地球に帰ろうとする宇宙船ノストロモ号だが、ある惑星で異星人の宇宙船を発見し、調査することに。そこで一人の乗組員が謎の生物に寄生されてしまい、やがてその生物が成長を遂げて異形の怪物に変貌を遂げる。
仲間たちが怪物に次々と殺されていく中で、女性航海士のリプリー(シガニー・ウィーバー)が一人生き残って怪物と戦いに挑む――。
あえて主人公らしく描かないことで、生き残ることの奇跡を感じる
女の強さはついに、地球すら飛び越えてしまいました。
宇宙空間でただ一人生き残り、得体の知れない怪物に追われる。これほどの恐怖、耐えられる女はいるのでしょうか。
いるんです。リプリーがその“強すぎる女”なのです。
だけど本作は、途中まで誰が主人公なのか分からない。視点は常に俯瞰しており、エイリアンに翻弄されていく乗組員の恐怖を目撃していくしかない。
だからこそ、誰が生き残るのか?というスリルが味わえる。
最初から主人公がはっきり分かれば、ホラー映画のパターンとして主人公が生き残るのは誰もが分かっている。
そんな予定調和をぶち壊す演出により、恐怖心が更に増大する。
誰もが自分だけが生き残るなんて確証はなく生きている。
だからこそ、リプリーが一人生き残ったときに奇跡を感じ、また彼女の“サバイバル精神の強さ”を知ることになるのです。
続編ごとに強さが増す、リプリーのサバイバル精神
『エイリアン』シリーズは長い年月を超えて4作も続編が作られている。
元々は主人公らしく描かれていなかったリプリーが女として成長し、ますます強くなっていく姿に目を放せません。
「生き残る」――これは決して、映画だけに、宇宙空間だけに適応する言葉ではないでしょう。社会でも恋愛でも、生きているものは必ず死ぬ。成功していても油断はできない。
盛者必衰の世の中は、まさにエイリアンがすぐそばで口から口を出してグァバーーッと広げる恐怖が常につきまとっている。
なぜ、本作が30年以上もの間語り継がれる名作になったのか。それは、単なるSFホラーに留まらず、日常の中のあらゆる恐怖を「宇宙」「一人」「エイリアン」に置き換えているからです。
リプリーが下着姿で油断している最中、エイリアンが間近でこっちを見ている。このエイリアン、ちょっとした変態です。そんな下劣な奴に打ち勝つリプリーの勇姿を見るために、続編を順に辿って観ていくのも面白いかもしれません。
『エイリアン』Blu-ray発売中
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発売元:20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
現実では映画のように、はっきりと分かる敵がいない。戦う相手がいない。事件の真相を探り当てることもない。
だけど、ふと窮地に陥ったときにマロリー、リスベット、リプリーのような力が発揮できるかもしれません。
これらの女たちはビルとビルの間を飛び越え、007にすら頼られ、宇宙でも生き残るのですから。
女の強さとは一体何なのかがわかる三作。
男(&エイリアン)をギャフンと言わせる彼女たちの活躍は、爽快感を味わえること間違いなしです。
Text/たけうちんぐ
初出:2013.09.06