普通に生きていて、愛する人との関係を引き裂かれることなんて滅多にない。
恋敵がいたとしても、別に命の危険に晒されることはない。ロミオとジュリエットみたいなこともない。親に反対されても、死に至る事態ではない。
でも、この映画に出てくる男女は常に死と隣り合わせ。ある日突然、敵同士になる。性暴力と支配に脅えながら愛し合うなんて、現実にあり得るのでしょうか?
でも、このような悲劇がたった約20年前に実際にあったのです。
ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争で敵同士になってしまった男女を描くのは、今回が長編映画初監督となる女優のアンジェリーナ・ジョリー。 売れっ子でナイスバディ、しかもブラッド・ピットの妻。誰もが羨むようなセレブの彼女ですが、過去に壮絶な日々を送ってきたことは意外と知られていません。
両親の離婚、鬱、自殺未遂、二度の離婚、そして人道支援活動。そういった経験がすべて映画に反映され、女としての尊厳と強さを訴えかけてきます。
紛争を真正面から描くことで、この映画は彼女が命を懸けて取り組んでいる活動の延長線上にあることが伺えます。
ストーリー
1992年、ボスニア・ヘルツェゴビナ。画家のアイラ(ザーナ・マリアノビッチ)は警官のダニエル(ゴラン・コスティック)と交際を始めた。愛し合い、抱き合う二人。だが、ライブバーでダンスを楽しんでいると突然爆発が起きる。二人は奇跡的に助かるが、店ごと吹き飛び、大勢の人の命が奪われてしまう。
4ヵ月後、ムスリム人の女たちはひたすらレイプをされ続け、支配に脅えていた。アイラも敵対するセルビア人の兵士に捕まえられる。そこで助けてくれたのは、セルビア系ボスニア軍の将校になったダニエルだった。ダニエルから肖像画を描く任務を与えられたアイラは一時的に解放され、再び彼との愛の日々を取り戻す。しかし、紛争が激化する中、異なる民族の二人には過酷な運命が待ち構えていた――。