私の子どもが生きていた…?『短い記憶』

青少年の初恋、未婚の母、動物遺棄。韓国発のこの作品は一般的かつ社会的なテーマをバックに抱え、ありがちな恋愛映画とは一線を画した物語です。
かつて放送局のドキュメンタリー番組のディレクターだった新鋭ミン・ヨングン監督が、ドキュメンタリー制作を通じて培った豊かな経験を生かし、初の長編映画を完成させました。
主演のユ・ダインはほとんど無名の女優でしたが、ソウルインディペンデント映画祭2010の独立スター賞(俳優部門)に輝き、その繊細な演技は韓国で高い評価を受けています。

17歳の高校生ヘファ(ユ・ダイン)とハンス(ユ・ヨンソク)はお互いに恋をし、付き合っていた。しかし、ヘファが妊娠をしてしまうとハンスは忽然と姿を消してしまった。
妊娠をしてしまった未成年のヘファ。ハンスとの幸せな人生を夢見た彼女だったが、一人取り残されてしまう。そして5年ほど過ぎたある日、ヘファの前にハンスが突然現れる。
「僕たちの子は生きている」
死んだとばかり思っていた子どもがまさか…。ハンスからそれを伝えられ、信じられないヘファ。
しかも、子供が養子にもらわれたという事実を知り、彼女の心はどうすることもできないほど揺れ動く。2人は、失った過去を取り戻せるのか――。

この映画には、刺激的な映像も派手な起承転結も、トップスターの起用もありません。
しかし、確かな構成と俳優の感情表現で、商業映画ではなかなか味わうことのできないインディペンデント映画ならではの細やかで深い感動があります。
本来映画が持っている“ストーリーの力”は、あなたを簡単に登場人物と同じ視点に立たせます。
きっと、この作品は10代の時の苦しくて切ない恋の記憶をあなたにはっきりと思い出させるでしょう。少しにごってしまった感性をリフレッシュさせるにはもってこいの作品です。

6月9日(土)より全国のコロナシネマワールドにてロージョー

監督:ミン・ヨングン
キャスト:ユ・ダイン、ユ・ヨンソク
提供・配給:マグネター株式会社
原題:Re-encounter/2010年/韓国映画/107分
URL:https://mijikaikioku.jp/

Text/Michihiro Takeuchi