青春は美化されがち。
だから、もっとキラキラさせてほしい
現代劇であるように見えて、携帯など現代を匂わせるアイテムがほとんど出てこない。昭和なのか平成なのか、どこかタイムスリップしたような不思議な感覚に陥る。
なずなが海で拾った玉を投げると、なぜか時間が巻き戻る。「もしも、あの時……」と後悔と自責がそこでリベンジができて、典道は新たな運命を選択する。そんなSF的要素と青春の淡い記憶が嚙み合い、後半はいまだかつて見たことのないビジュアルが目に飛び込んでくる。
青春は美化されがち。だからこそ、もっとキラキラさせてほしい。そんな願いが叶うように、なずなと典道が眺める景色が劇的に変化する。
初めてあの人と手を繋いだ瞬間、どんなに退屈な景色でも、いつも見慣れている風景でも、映画のワンシーンのように変わったことを覚えているだろうか。そこでは重力さえ忘れ、異空間のように気持ちがふわふわと漂い、気持ちが上手く伝えられなかったこともあったかもしれない。
アニメでしか表現できない初恋の衝動が詰まっている。使い古された“ノスタルジー”にまた新たな表現方法が発明され、もう二度と戻れない夏がカラフルな花火とともに彩られる。
いわゆるリメイクモノは、元の作品を越えるか? 越えられないか?というハードルが付き物。でも、全く別の方法で中学生男子と女子と花火を映し出した本作は、観終わるとそんな議題は吹っ飛んでしまう。
本作を下から見るか? 横から見るか?
その角度は花火同様、どこから眺めても美しいに決まってるのだから。
ストーリー
とある海辺の町の夏休み。迫り来る花火大会を前に、「打ち上げ花火って、横から見たら丸い?それとも平べったい?」という疑問で盛り上がる中学生男子たち。
そんな中、典道(声:菅田将暉)が想いを寄せるクラスのアイドル的存在・なずな(声:広瀬すず)が母親の再婚によって転校することになる。
なずなは典道を“かけおち”に誘い、町から逃げ出して東京へ向かおうとする。だが、抵抗もむなしく母親に連れ戻されてしまう。
「もしも、あの時……」もどかしい想いを抱えながら、なずなが海で拾った不思議な玉を投げると、なぜかなずなが連れ戻される前まで時間が巻き戻る。
繰り返される時間と、それにより終わらない夏の一日。そこで典道となずながたどり着く運命とは――。
8月18日(金)、全国東宝系にてロードショー
総監督:新房昭之
脚本:大根仁
原作:岩井俊二
キャスト: 広瀬すず、菅田将暉、宮野真守
配給:東宝
2017年/日本映画/90分
URL:『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』公式サイト
Text/たけうちんぐ
次回は<座って観たくない。もはや、叫びたい。恋の衝動がすごい『ベイビー・ドライバー』>です。
子どもの頃の後遺症で耳鳴りが止まない通称“ベイビー”は、犯罪組織のドライバーから足を洗い、想いを寄せるウェイトレスと共に遠くの町へ逃げることを夢見る——。『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』のエドガー・ライト監督最新作。
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