「もしも、あの時に戻れたら。」
人生はいつも決断の連続で、青春時代ともなると枝分かれした選択の中で、知らず知らず運命が左右されていく。
誰もが遠い目をして思い出す“あの頃”はそれに全く気付かない。あいつの想い、あの子の気持ちさえも、鈍感なまま日々を過ごしてしまう。
青春は花火のように一瞬。去りゆくノスタルジーが眩しい青春ドラマが、SF的要素を含んだアニメとして現代に蘇った。
1995年に劇場映画化した岩井俊二監督の“名作”と名高いテレビドラマを原作とし、脚本を『バクマン。』などの大根仁、総監督を『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之が手がけて完成したアニメ映画。
広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子など豪華キャストによって、20年の時を経て再映画化した理由はどこにあるのか?
アニメでしか表現できない、今だからこそ描ける青春がここにある。
ヒロイン・なずなの魅力が全開
ただ単純に美しい青春映画が観たければ、本作はあまりオススメできない。
ちゃんと性春の要素も孕んでいるところが、大根仁監督が脚本を手がける理由の一つであり、中学生男子の無軌道な情熱、無意味な欲望が「下から見るか?横から見るか?」と割とどうでもいい花火の角度を劇的なものにしている。
一人のアイドル的存在の女の子=なずなを巡って小さな炎を燃やし合う典道と祐介。ここまで男子の欲望を掻っさらう“なずな”がどう描かれるか、ここが重要でしかない。
岩井俊二監督の熱烈なファンが多い名作をリメイクするなんて無謀な挑戦にも思われるが、それは冒頭10分を過ぎた辺りから杞憂に終わる。
互いに分野は違えど、キャラクターの鋭い切り取り方に共通した魅力を感じさせる大根仁×新房昭之両監督の掛け算は、なずなの小悪魔的振る舞いから満点を振り切る。典道を“かけおち”に誘い、思わせぶりな言動の数々は、男子が10数人束になってかかっても敗北する。
ヒロインがここまでチャーミングであれば、典道と祐介が争い合う理由も理解できるし、その可愛さだけでもうあと200分は観続けられるのだ。
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