世界中どこのヒーロー/ヒロインを探しても、“爆睡中”に活躍するキャラクターはいない。女子高生・森川ココネはまさにそれ。誰もが眠る時に見る夢をモチーフに、その夢と現実とが交差する近未来、というより“近々”未来だ。
あと3年後、東京オリンピックが開催される2020年を舞台にしたSFアクションアニメが誕生した。
『攻殻機動隊S.A.C.』『東のエデン』の神山健治監督が自ら原作・脚本を手がけたオリジナルの長編アニメーション。
声の出演に『とと姉ちゃん』で注目を集めた高畑充希、満島真之介、古田新太、高橋英樹、江口洋介など個性派・ベテランが勢ぞろい。岡山県倉敷市の“日常”と、夢の中の“非日常”が入り混じり、今までに全く観たことのない作品に仕上がっている。
現実と夢の世界とでリンクしていく
それにしても呑気なものだ。これからアクションが始まると思いきや、主人公が眠りに就くのだから。
倉敷市の自然溢れる景観と、夢の中の機械溢れるSF世界。二つを行き来するココネは物怖じしない。短いスカートをひらりと風に揺らし、携帯片手に突き進む。
父・モモタローと母・イクミの血を受け継いだのか、行動力のあるその姿は勇ましくて不安感が一切ない。主人公に迷いがほとんどなく、それが痛快に思える。そもそも、いつでもどこでも眠る女の子に恐いものがあるはずがない。
誰もが見る夢を題材に、限りのないイマジネーション全開の世界観に没頭する。夢が進むたびに現実の物事が働き、二つが作用し合う描写が心地いい。
現実と夢とでキャラクターたちがリンクしている。ココネとエンシェン、モモタローとピーチ、渡辺とベワン、志島とハートランド王などと出演陣が一人二役の贅沢さ。
正直、最初は「これは何だ?」の連続。夢の描写に振り回されてしまう。だが、パズルのように散りばめられた伏線が一つずつ回収されていき、謎が解き明かされていく過程が気持ち良くてたまらない。
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