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未来の自分が楽しむための投資を。不安な日々のわたしの過ごし方/難波里奈

全国のジャズファンに愛されている純喫茶「YAMATOYA」

通常ならば日々だんだんとあたたかくなっていき、花のつぼみが開くのを今かと待ちわびる冬の終わりですが、今年は心がざわつくようなニュースが多く流れ、不安な気持ちで過ごしている方が多いと思います。もちろん体調が第一ですが、純喫茶で過ごすような息抜きの時間がないと日々を頑張る活力も失われてしまうような気がします。

現在のように騒ぎが起こる前、9月から2月まで、ほぼ毎月のように京都へお邪魔していたのは、2018年夏に発売した『純喫茶とあまいもの』の続編として、京都のお店だけをまとめた一冊を作るためでした。

岡崎にあるお店での取材を終えて、しばらく周辺を散策したあとタクシーで移動しているときのこと。見たことのある店名が視界に飛び込んできたのでタクシーを止めて立ち寄ったのが、1970年創業の老舗ジャズ喫茶YAMATOYAでした。

ジャズ喫茶YAMATOの画像
ジャズ喫茶YAMATOの画像

2013年に一度リニューアルされていますが、古くからの常連さんのリクエストを受けて、ほっとする店内の家具などはそのままになるべく改装前に近づけたそう。私語厳禁のイメージがあるジャズ喫茶ですが、こちらも当時はお話可能な1階と、不可の2階に分けて営業していたそうです。

ジャズ喫茶YAMATOの画像
ジャズ喫茶YAMATOの画像

初めは少なかったお客さんが増えたのは、雑誌「平凡パンチ」の京都特集で紹介されてから。その後、ニューヨークタイムスに掲載されたり、五木寛之の小説『燃える秋』にも登場したり、松本隆さんもご来店されたり、と全国のジャズファンをはじめ良く知られたお店となりました。

店内奥の棚に並べられているレコードは、なんと5000枚以上。ずっと保管しておくばかりではなく、あまり聞かないレコードは常連さんなどにプレゼントし、新しいものを補充しているというマスター。「珈琲やウィスキーにも言えるけれど、ミュージシャンそれぞれの音があるからね。自分の好みを見つけられるように自由に聞いたらいいと思う」と話して下さいました。ジャズコンサートも定期的に開かれていて、海外の著名なピアニストが来店することも。

ジャズ喫茶YAMATOの画像
ジャズ喫茶YAMATOの画像

こだわりのスピーカーから流れるやわらかい音の中で頂きたいのは、その日に使用する豆を都度冷凍庫から出すためいつも新鮮で香り豊かな珈琲と、他では見ないユニークなメニューの「高瀬舟」です。

こちらは京都にある三善製菓で販売されているイカダ形をした煎餅の中に、生クリームと数種類のドライフルーツが飾られたもの。読書しながらでも片手でさくさくと食べられる手頃なお供です。

ジャズ喫茶YAMATOの画像
ジャズ喫茶YAMATOの画像

色々と不安要素が強いこの頃ですので、人の多い純喫茶へ訪れるのを躊躇してしまうこともあるかと思います。今までのように毎日行けない事態も想定して、私はお世話になっているお店でコーヒーチケットを購入していこうと思います。珈琲10杯分の料金を先に支払う代わりに、未来の自分への楽しみとしての投資。色々と不安が絶えない日々はまだ続きそうですが、皆さまどうか心も身体もお元気で過ごされますように。

Text/難波里奈

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