「あなたがいれば そこは天国
あなたがいない そこは地獄」

たけうちんぐ 映画 『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』 宮藤官九郎 長瀬智也 神木隆之介 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation

 死ぬのは誰だって怖い。
どこに行き着くのか分からないし、天国や地獄だって本当にあるのか誰も知らない。
と、“死”にはシリアスな感情が付き物だが、ここまで笑い飛ばしてくれると残された人や、これからあの世に行く人にとって気持ちが少し和らぐのかもしれない。

 天国も地獄もその概念は場所を指すのではなく、会いたい人に会えるかどうかだ。
本作のテーマソング『天国』の歌詞が胸を打つ。

「あなたがいれば そこは天国 あなたがいない そこは地獄」

 大助とキラーKが地獄という場所に苦しむ描写はなく、それよりもひろ美と元恋人に会えないことが何よりも辛いことだと描いている。

 地獄のディテールにリアリティを追求するのではなく、人と人との繋がりに笑いを交えて描くのが宮藤官九郎らしい。
彼が脚本を手がけたドラマ『木更津キャッツアイ』も主人公が余命半年という“死”が根底にあるにもかかわらず、照れ隠しのように終始笑いに包まれている。
クドカン作品は感動のゴリ押しを一切しない。どこかで笑いを取ろうとするスタイルが逆に泣かせてくる。
家族や友人や恋人との関係性を重点的に描くことの核心は、人生賛歌のような気がしてならない

 いくら天国や地獄が楽しくても、もう二度と会えない人がいる。その事実を目の当たりにした時、多くの人は今生きている実感をする。
会いたい人に会える、それ以上の天国はないだろう。
映画を観終わった帰り道、ふと好きな人に会いたくなってしまいます。

 天国とは何か、地獄とは何か。大助とキラーKを見ていると、その答えが少しずつ分かってくる。
大切な人がいる限り、この世だって天国にも地獄にも変わる。

 本心を隠してかっこつけたり、恥ずかしがってる場合じゃない。死んだら全部おしまいなのだ
会いたい人に会えるうちに、伝えたいことをちゃんと伝えたい。
この“地獄”を観た後は、悔いのないように日々を過ごしたくなることでしょう。

ストーリー

 大助(神木隆之介)は片想いしている同級生のひろ美(森川葵)に想いを告げようと、修学旅行に全力を注いでいた。
だが、彼らを乗せたバスが事故に遭ってしまって命を落とす。
ふと目が覚めると、辺り一面炎が渦巻く中で人々が苦しめられている光景が。
そこはなんと地獄だった。

 ひろ美への未練を残した大助の前に、地獄農業高校の軽音楽部顧問にしてロックバンド“地獄図(ヘルズ)”の赤鬼・キラーK(長瀬智也)が現れる。
やがて大助はひろ美ともう一度会うために、キラーKの厳しい特訓のもと地獄めぐりを始めることに――。

6月25日(土)全国ロードショー

監督・脚本:宮藤官九郎
キャスト:長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、森川葵
配給:東宝=アスミック・エース
2016年/日本映画/125分
URL:『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』公式サイト

Text/たけうちんぐ